研究実績の概要 |
肥満症は様々な健康障害をもたらし、寿命を短縮させるだけでなく、様々な合併疾患によりQOL を著しく低下させる。つまり過剰な栄養摂取が、脂肪細胞の過多な増殖および脂肪細胞の肥大化を誘発する。しかしこれまでの肥満症治療薬は副作用が多いことや、国内で認可されているものには脂肪細胞をターゲットにしたものが存在しない。個体において「脂肪細胞の数と大きさ」は適切に制御されており、恒常性維持にとって不可欠な細胞である。一方、肥満は生活習慣病に対するリスクファクターとなり、その原因は白色脂肪細胞の「細胞数の増加や肥大化」である。従って、脂肪細胞の大きさや細胞数を適切に制御することが、肥満問題の解消の鍵となり生活習慣病の予防につながると考えられる。申請者は、IRBIT (IP3 receptor binding protein released with inositol 1,4,5-trisphosphate) KO マウスが、「体重低下・脂肪組織の減少・個々の脂肪細胞の矮小化」さらに「血中 TNF-α 濃度の低下」を示すことを発見した。このことは、「IRBIT が脂肪細胞の数や大きさ、アディポサイトカイン産生を適切に調節する分子」である可能性を強く示唆している。本研究では、「IRBIT が、いかに脂肪細胞の数・大きさ、さらにアディポサイトカイン産生を調節しうるのか」を分子レベルで解明することを目的とする。
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