研究課題
本研究課題は、生活習慣病疾患特異的なリン・ビタミンDの臓器間代謝制御機構の解明を行い、重症化および合併症予防法の開発を目的とした。本年度は、ストレプトゾトシン(STZ)誘導性糖尿病ラットを作成し、食事性リンの応答性を解析した。【方法、結果】5週齢オスのSDラットにSTZ(65 mg/kg B.W.)(STZ群)または同量のCitrate Buffer(Control群)を腹腔内注射し、9日間飼育した。血漿1,25(OH)2D濃度は、Control群と比しSTZ群において著しく減少した。また、カルシウムの血中濃度の低下、リンおよび副甲状腺ホルモン (Parathyroid hormone;PTH)の血中濃度の上昇が確認された。しかしながら、25(OH)D濃度及び繊維芽成長因子23の血中濃変には変化はみられなかった。次にリン制限 (RP) 食による糖尿病発症時におけるビタミンD代謝異常の改善効果を検討した。食餌性リン0.6%(CP)を 0.02%としたリン制限(RP)食によるSTZ誘導性糖尿病ラットのビタミンD代謝異常の改善効果の有無を検討した。STZ群へRP食およびCP食を8日間与えた結果、Control群に対しSTZ群において有意に低下した血漿1,25(OH)2D濃度は、RP食により著しく回復した。つまり、RP食投与は、STZ群の1,25(OH)2D及びカルシウム、PTHの血漿濃度を正常レベルにまで回復させることを明らかにした。今後、糖尿病で上昇するグルココルチコイドによるビタミンD代謝異常の機序について検討する予定である。
4: 遅れている
コロナ感染拡大の影響により計画通りの研究を遂行することが困難であった。
2020年3月頃から世界的なCOVID19感染問題により計画に従った研究活動を遂行することに支障が出ている。引き続き研究を遂行する努力により、生活習慣病モデル動物として糖尿病、肥満モデル、慢性腎不全モデルおよびLPS感染炎症モデルを用いてリン・ビタミンD代謝に関わる遺伝子群について解析を進める。
コロナ感染拡大の影響で計画通り研究が遂行できていないことが次年度使用額が生じた理由であり、今後、糖尿病で上昇するグルココルチコイドによるビタミンD代謝異常の機序について研究実施する計画である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)
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10.3164/jcbn.20-24
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