研究課題
本研究課題は、生活習慣病疾患特異的なリン・ビタミンDの臓器間代謝制御機構の解明を行い、重症化および合併症予防法の開発を目的としたものである。本年度は、これまでに同定した食事性リンに応答性する遺伝子群が、糖尿病状態においてその応答性がどのように影響を受けるか詳細に解析した。同定したリン応答遺伝子の中で糖代謝関連遺伝子において腎臓における反応性の違いを検討した。生後6週齢雄性コントロールマウス、 KK-Ay/TaJclマウス(以下、糖尿病マウス)を高脂肪食で飼育した後、リン含有量の異なるLP食(0.15%)およびHP食(1.5%)を7日間摂取させた。その結果、腎臓における糖代謝関連遺伝子のmRNA発現に対する食餌性リンの応答性は、健常マウスと糖尿マウスで異なることが明らかになった。さらに、リン応答性がある活性型ビタミンDの血中濃度について解析した結果、糖尿マウスでは応答性が低下した。実際、糖尿マウスにおけるビタミンD代謝関連遺伝子のCYP27B1およびCYP24A1およびalpha-klotho遺伝子のmRNA発現においてもリン応答性が低下していた。また、我々は、食餌リン応答性には雌雄差があることも明らかにしており、糖尿病腎症発症リスクにおける男女差の解明につながると期待している。今後、糖尿病における食事性リンに対する応答メカニズムを解明することは、リンを中心とした新たな糖尿病の栄養管理法の開発につながり、糖尿病におけるビタミンD代謝異常や腎症発症や進展予防に寄与 できると考えている。
3: やや遅れている
糖尿病性腎症を発症するモデルマウス(KK-Ay/TaJcl)の飼育管理に必要な特殊飼料のデザインおよび納品に時間がかかったことと、骨組織を粉砕するブレンダーの購入・納期が遅れ、リン・ビタミンD代謝関連因子の解析に時間を要しているが、腎臓および肝臓組織における解析はおおむね順調である。
引き続き研究を遂行する努力を行い、糖尿病モデル、慢性腎不全モデルおよびLPS感染炎症モデルを用いてリン・ビタミンD代謝に関与する遺伝子群の同定と発現調節機構についての解析を進める。
糖尿病モデルマウスの飼育管理における特殊飼料および骨組織解析に用いるブレンダー機器の納期の遅れにより計画通りの研究を遂行することができなかったため次年度使用額が生じた。引き続き研究を遂行し、生活習慣病モデル動物として糖尿病モデル、慢性腎不全モデルおよびLPS感染炎症モデルを用いてリン・ビタミンD代謝に関わる遺伝子群について解析を進め、生活習慣病特異的なリン・ビタミンD代謝調節機構の解明を行う。
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Am J Physiol Renal Physiol.
巻: 326(3) ページ: F411-F419
10.1152/ajprenal.00310.2023.