研究課題/領域番号 |
19K11781
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研究機関 | 鈴鹿医療科学大学 |
研究代表者 |
郡山 恵樹 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 准教授 (70397199)
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研究分担者 |
古川 絢子 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助教 (10455537)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルツハイマー型認知症 / 糖尿病 / AGEs / 糖化 / 神経原繊維変化 |
研究実績の概要 |
グリセルアルデヒド由来である Glycer-AGEs は、他の様々な糖により生成されるAGEsと異なって、中枢神経細胞に対して非常に強い細胞障害性を示してきた。このGlycer-AGEsが体内で生成/蓄積してくると様々な生活習慣病を発症・進展する事が明らかになってきているが、Glycer-AGEsとAD発症の関係を証明した報告は皆無である。 そこで、本研究はGlycer-AGEsが中枢神経系に及ぼす細胞障害とその標的分子を探索・精査し、ADの発症メカニズムを説明することを目的としている。これらのメカニズム解明はADの予防・治療に大きく貢献できるのみならず、社会に生活習慣の予防・改善法として日常的な糖摂取の考え方や糖尿病予防がAD予防につながる一連の新たな概念を提唱できる。 糖尿病透析患者から多種AGEsが含まれる血清を集め、多くのAGEsの中で最も神経細胞障害性が高いAGEsがGlycer-AGEsであることを世界で初めて証明、報告した。また我々は、Glycer-AGEs による神経障害作用メカニズムとAD様のマーカー変動との相関性について初めて報告した。本研究において作成したGlycer-AGEsの抗体およびその定量法は我々独自のものであり世界中から分与の希望や測定依頼が相次いでいる。また、そのメカニズムはこれまでのAD仮説(βアミロイド仮説、神経原線維変化仮説)とどういった位置関係を示すか精査し、その予防を念頭に糖摂取や糖尿病予防、AD予防法を提案して情報を社会に還元できることを最終的な目標としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らはこれまで、果糖コーンシロップ含有飲食物の過剰摂取によるグリセルアルデヒド(GA)の蓄積が糖尿病の発症やアルツハイマー型認知症(AD)様の強い中枢神経障害を引き起こす可能性を報告してきた。これまでの研究から、GAは細胞内タンパク質と反応してGA由来の終末糖化産物(AGE)、Glycer- AGEsの生成/蓄積を介して強い中枢神経変性を引き起こすことが分ってきた。しかし、未だその原因となるメカニズムの解明には至っていない。GA は、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞に対してGlycer-AGEs を蓄積するとともに神経障害を起こす。GA処理したSH-SY5Y細胞ライゼートを用いて、2次元電気泳動で分離し、独自の抗Glycer-AGEs抗体を用いたウェスタンブロットとMALDI-TOF/TOFタンデム質量分析計でGlycer-AGEs化標的を確認したところ、いくつかの有意なスポットが得られており、最も変化の大きかったスポットがβ-tubulinと同定とできた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度でAGE化された標的タンパク質の一つが β-tubulinであることが同定された。グリセルアルデヒド(GA) は、タンパク質に対して非酵素的糖化反応を起こし重合を起こす。GA処理した細胞において、β-tubulinが重合する様子をウェスタンブロットで定性・定量する。また、β-tubulin のタンパク質をGA 処理してウェスタンブロットにより重合する条件を決定する。また、β-tubulinの重合の程度をHPLCや原子吸光光度計で測定する。また、細胞内の生理学的役割について、軸索伸長の程度や神経軸索再生に対するGAの影響を精査してく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Tubulinなど、一部の試薬入荷の遅延があったため、その分の残額となった。年度初めに注文をする予定であり、すぐに購入後実験を再開することが可能である。
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