研究課題
脂質異常症は有病率が高く、血中脂質レベルをうまくコントロールすることは容易ではなく、脂質異常症による社会的経済負担が大きいことが知られている。血中の脂質コントロールに定期的な身体活動や運動が有益であることが知られているが、定期的な身体活動や運動によって維持・向上する体力と脂質異常症の発症リスクとの関連は不明である。そこで、体力レベルと脂質異常症の発症リスクに関連があるか、人間ドック健診の受診者を対象に検討を行った。脂質異常症ではなく、握力、垂直跳び、閉眼片足立ち、立位前屈、全身反応時間を測定した男性9941人、女性6208人について、6年間にわたり脂質異常症の発症の有無を追跡した。体格指数(BMI)当たりの握力の成績順に7グループに分け、脂質異常症の発症リスクを検討したところ、最も成績が悪かった群と比較すると最も成績がよかった群の脂質異常症の発症リスクは低く、明確な量反応関係が示された。さらに、BMI当たりの垂直跳びの成績と脂質異常症の発症リスクとの間にも明確な負の量反応関係が示された。他の体力項目には関連は認められなかった。これらの結果により、握力や垂直跳びが脂質異常症の発症リスクに関するリスクマーカーになる可能性が示された。さらに、加齢による握力の変化について縦断的に記述し、追跡期間中の握力に影響する要因を明らかにした。2001年度から2007年度までに人間ドック健診ならびに握力測定を実施し、2012年度までの間に少なくとも2回以上握力測定を行った約60,000人(女性21,519人)を対象に、握力の変化について男女別にモデリングを行った。その結果、男女ともに、加齢に伴う握力の低下は非線形であり、40歳以降から低下速度は大きくなった。さらに、握力の低下は、女性と比較して男性において顕著であった。
2: おおむね順調に進展している
体力レベルと脂質異常症の関連について初期段階の検討が実施できた。今後は体力レベルだけではなく変化を考慮した分析を実施していく予定である。
今後は体力レベルだけではなく変化を考慮し、他の生活習慣病をアウトカムとした分析を実施する予定である。
本年度はwindows7のサポート終了に伴うPCの買い替えおよびソフトの更新を目的に、前倒し請求を行ったが、予定していた金額より安価に購入することができ、来年度への繰り越し金が生じることになった。また、出席を予定していた学会・会議等がコロナウィルスの感染拡大に伴い延期・中止となったため、計上していた旅費を使用する機会がなくなった。来年度は感染状況を見ながら、旅費を使用するとともに、解析のサポート等の謝金に使用するなど本研究課題の遂行を円滑に進めるために使用する予定である。
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J Epidemiol.
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https://doi.org/10.2188/jea.JE20200034