研究課題/領域番号 |
19K11791
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
稲垣 純子 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (90271056)
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研究分担者 |
渡辺 彰吾 岡山大学, 保健学研究科, 准教授 (20548341)
廣畑 聡 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (90332791)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NASH / 線維化 / CCR2陽性細胞 / 星細胞 / オステオポンチン |
研究実績の概要 |
非アルコール性脂肪肝炎 (NASH) は、肝硬変・肝がんといった重篤な疾患へと進展する難治性疾患で、肝線維化進展等の病態メカニズムの解明と治療法の開発が急がれている。そこで本研究では、組織マクロファージであるKupffer細胞や肝星細胞などの活性化・分化誘導、骨髄からの炎症性CCR2陽性マクロファージの肝臓への誘引・浸潤・蓄積について、特に、CCR2陽性細胞と、サイトカインとして肝壊死・線維化に重要な役割を有しているとされる細胞外マトリックスタンパク質のオステオポンチンに注目して、肝線維化の分子制御機構を明らかにすることを目的とした。 SHRSP5/Dmcrラットは、高脂肪高コレステロール (HFC) 食を投与することで顕著なNASH病態に加え炎症細胞の著明な浸潤などの特徴を持つ。このNASHモデル肝組織を用い、まず、CCR2やオステオポンチンの発現・局在を免疫組織染色法にて検討した。その結果、本NASHモデル肝組織において普通食ラットに比べ、CCR2およびオステオポンチン発現の顕著な亢進が認められた。さらに、CCR2とオステオポンチンの局在はほぼ一致し、その部位は、Masson Trichrome 染色により青く染まる膠原線維(コラーゲン線維)部分であることも分かった。また、これらの領域は肝細胞壊死が起きている部位に最も近接した線維化領域であることも確認された。肝線維化においてCCR2陽性細胞とオステオポンチンの関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NASH病態を示すHFC食投与SHRSP5/Dmcrラットの肝臓組織は、本研究の分担者である渡辺より随時得ることができるため、免疫組織染色法による解析はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引続き、NASHモデルとしてHFC食を投与したSHRSP5/Dmcrラット肝臓組織を用い、CCR2陽性細胞とオステオポンチンの肝壊死・肝線維化への関与について検討する。 1.線維化部位に集積するCCR2陽性でオステオポンチンを発現する細胞をマクロファージや筋線維芽細胞のマーカーを用いて蛍光二重免疫組織染色法にて解析・同定する。 2.オステオポンチンのNASH病態への役割、特に、肝壊死・肝線維化における機能を明確にするため、以下の実験を計画している。 a)経時的に(2, 4, 6, 8週間)HFC食を投与したSHRSP5/Dmcrラッ肝臓組織を用いて、オステオポンチンの発現量の変化および局在について検討する。また、CCR2陽性オステオポンチン発現細胞と線維化の程度を比較検討する。 b)HFC食を与えた同ラットにCCR2/CCR5拮抗薬であるcenicriviroc (CVC)を経口投与して、肝臓におけるオステオポンチンの発現量の変化および肝線維化の抑制効果を検討する。また組織病理学的解析よりCCR2陽性マクロファージの肝臓への浸潤・蓄積の程度を比較する。さらに、CVCの線維化抑制効果の理由としてオステオポンチン発現抑制ばかりでなく、コラーゲン分解酵素であるMMPなどの発現および分解酵素活性の抑制についても検討する。
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