研究課題
超高齢化社会を迎える日本にとって、老化メカニズムを解明し、健康寿命を延長することは最重要課題である。これまでの老化研究では、老化・寿命制御に重要な役割を果たす制御因子・シグナル伝達系の特定がなされており、健康寿命の延長をもたらし、認知・運動機能を維持・向上するための治療法の開発に期待が高まっている。成体幹細胞である間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells:MSC)は、主に骨髄に存在し、骨髄から末梢循環へ移行し、臓器の新陳代謝・機能維持に関わると同時に、損傷時における治癒プロセスにも貢献している。すなわち、MSCは、生体全体の恒常性維持(ホメオスターシス)と自己治癒力に大きく貢献している細胞との認識が広まっており、既に複数の疾患をターゲットとした臨床応用が試みられている。我々は、MSCのこのような性質を利用して、1990年代より、脳梗塞・脊髄損傷などの神経疾患動物モデルに対して静脈内に投与した結果、治療効果をもたらすという報告をしてきた。我々は、いままでに行ってきた研究から、老化により生体内のMSCが機能低下を起こすことが、個体の老化の原因となっているとの仮説を立て、本研究で 、MSCの投与・補充による“抗加齢効果”をもたらす詳細なメカニズムを解析し、健康寿命の延長をもたらす治療薬の開発に展開したいと考えた。本研究実績として、神経疾患動物に対して、ラットから採取したMSCを経静脈的に投与した結果、寿命の延伸効果が得られることを報告した。本研究の成果により、老化の本質が明らかとなり、健康寿命の延長が可能となれば、超高齢化社会を迎えているわが国において、大きな福音となり、波及効果は極めて高いと思われる。以上のように、補助金は適切に使用している。
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Molecular Brain
巻: 14 ページ: -
10.1186/s13041-021-00787-6