生後5日目の幼若期ラットに対し、麻酔下にて、両側の側脳室に6-hydroxydopamineを注入し、ドーパミン神経系を傷害した注意欠損多動症(ADHD)モデル動物を作製した。母子分離後、糖質制限ケトン体産生食を用いて5週間飼育し、モデル動物が示す異常行動に対する改善効果を検討した。糖質制限ケトン体産生食として、高脂肪のもの(HF-KD)とHF-KDよりも蛋白質を多く含むもの(HP-KD)の2種類を用いて検討した。 行動異常を確認する行動解析として、慣れた環境下における行動量を調べるために24時間ホームケージ試験を、新規環境下における行動量と不安関連行動の確認のために、オープンフィールド試験と高架式十字迷路試験を用いた。また、薬剤との併用効果確認実験では、ノルアドレナリン受容体遮断薬であるプロプラノロールと、ADHD治療薬であるアトモキセチンを用いて検討した。 本モデル動物は、新規環境下では多動と不安関連行動の減少を示した。一方、慣れた環境では、明期、暗期ともに運動量が減少していた。このような行動特性を有するモデル動物に対してHF-KDの効果を検討した結果、多動は改善されなかったが、異常不安関連行動は有意に改善された。また慣れた環境下での行動量の減少も改善された。次にHP-KDによる効果を調べた。その結果、HF-KDでは認められなかった多動に対するHP-KDの改善効果が認められ、全体的にHP-KDの方が良好な改善効果を示した。さらにプロプラノロールとHP-KDとの併用効果を検討した。プロプラノロール投与は、多動と異常不安関連行動に対してHP-KDと同程度の改善効果を示したが、両処置併用に伴う効果増大は認められなかった。またADHD治療薬であるアトモキセチンにも多動改善効果は確認されたが、不安関連行動異常に対する効果は認められず、HP-KDとの併用効果も観察されなかった。
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