これまでにヒトを対象として汗中塩分濃度から見たCFTR機能が低下していることと便秘との関係について研究を重ね、軽度にCFTR機能が劣っているヒトにおいて、一般に便秘に有効と考えられる乳酸菌や食物繊維の摂取等が便秘改善に効果的であることを確認した。昨年度はCFTR機能阻害による便秘モデルマウスの作成を試み、CFTR特異的阻害剤のCFTRinh172(阻害剤)を餌に混ぜ摂取させることで、便秘状態(糞水分率低下)を誘導できることを確認した。そこで本研究では、昨年度と同様の便秘モデルマウスにおける食物繊維摂取の影響を検討することを目的として研究を行った。 食物繊維(FI)としてセルロースを用い、コントロールは5%、欠乏食は0%とし、阻害剤は昨年の結果から40マイクログラムを1日分の餌に加え2週間継続投与の有り無しの4群(n=3)で実験した。今回の阻害剤の投与量は体重あたりにすると、体重1gあたり約0.6マイクログラム、昨年度は約0.8マイクログラムとなり、昨年度の投与量よりも約25%少ない条件での実験となった。 阻害剤の影響はFI 欠乏食群のみに糞水分率減少傾向がみられ、阻害剤を与えない場合は変化はなかった。よって、CFTR機能の弱い阻害の場合では、FIを十分量摂取していれば便秘は誘発されないが、FI欠乏食になると糞水分率を減少し便秘を発症させると考えられた。FI 0%群(n=12)とFI 0%+阻害剤群(n=6)の2群で更に検討したところ、糞水分率はそれぞれ36.44%、28.41%(p=0.12)で前述の結果と一致した。 腸内細菌叢へのFI摂取量と阻害剤投与の影響はラクトバチルス属の相対比率にみられ、FI摂取群で値は大きく、阻害剤投与で更に大きくなり(FI5%群2.3%、阻害剤投与群6.4%)、FI欠乏群は1%未満であった。
|