研究実績の概要 |
ABCタンパク質は、膜結合ドメインとそれに続くATP結合ドメインを持つ一群の膜タンパク質ファミリーである。バクテリアからヒトまで広く存在しており、トランスポーター、チャネル、レギュレーターとさまざまな機能を持つ。ABCA1, ABCA7は高い相同性を示すABCタンパク質で、動脈硬化症とアルツハイマー病の疫学的な負のリスクと考えられている。両者が慢性炎症ならびに脂質栄養にどのように関与するかを明らかにするため、生体内での最強のステロール代謝制御因子であるオキシステロールに着目した実験を行い、以下の成果を得た。 すでに2-ピコリン酸を誘導体化試薬として用いる液体クロマトグラフィー/質量分析法の測定により、他のオキシステロールと比べて血中濃度が低くかつステロール代謝には最も影響の大きい25-ヒドロキシコレステロール(25-HC)の定量を可能としていた。これは多種類のオキシステロールの同時測定のためには一部精度不十分であったが、トリメチルシリル化による誘導体化ならびにガスクロマトグラフィー/質量分析法を用いる測定系を採用することで、8種のオキシステロール(7α-, 7β-, 4β-, 22S-, 22R-, 24S-, 25-, 27-HC)の一斉分析が可能となった。 特に血中コレステロールやコルチコステロン濃度が極端に低いABCA1 KOマウスでは25-HCの、脳内Aβの早期出現を認めるABCA7 KOマウスでは24S-HCの濃度に注目しつつ、高脂肪負荷、コレステロール負荷時の変化を解析中である。
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