研究実績の概要 |
ABCタンパク質は、膜結合ドメインとそれに続くATP結合ドメインを持つ一群の膜タンパク質ファミリーである。バクテリアからヒトまで広く存在しており、トランスポーター、チャネル、レギュレーターとさまざまな機能を持つ。ABCA1, ABCA7は高い相同性を示すABCタンパク質で、動脈硬化症とアルツハイマー病の疫学的な負のリスクと考えられている。両者が慢性炎症ならびに脂質栄養にどのように関与するかを明らかにするため、生体内での最強のステロール代謝制御因子であるオキシステロールに着目した実験を行い、以下の成果を得た。 オキシステロールの生成経路には、酵素反応による変換以外に自動酸化のあることが知られている。保存条件によるコレステロールの自動酸化の程度を調べるため、 野生型マウス血清を窒素/空気/酸素で置換して密栓の上、-80℃/-20℃/20℃で28日間保存し、コレステロールならびにマウス血中主要オキシステロール8種(7α-, 7β-, 4β-, 22S-, 22R-, 24S-, 25-, 27- OHC)の濃度を測定した。条件により、7α,7β, 4β- OHCには顕著な、25-OHCには若干の増加が見られたが、最大の増加率を示した 4β- OHCでも-80℃、 他は-20℃以下での保存であれば置換条件にかかわらず濃度上昇はなかった。コレステロール濃度には保存条件による差はなかった。これらの結果より、採取後の検体中でのコレステロールの自動酸化によるオキシステロール生成は、酸素の存在よりも保管温度の影響を強く受けることがわかった。血液以外でのオキシステロール分析を可能とするため、マウス肝臓ならびに糞便を用いた場合の測定条件最適化を行なった。血液と肝臓、糞便でのオキシステロールのパターンならびにコレステロールとの比はそれぞれ異なることが示された。
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