研究課題/領域番号 |
19K11810
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
奥田 徹哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (20443179)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ケトン食 / ガングリオシド / てんかん / GM2A / ST3GAL2 / 抗糖鎖抗体 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究成果として、肝臓にて産生されるスフィンゴ糖脂質のうち、特定のシアリル化糖鎖を有する分子種の血中濃度に、目的とするケトン食の生体への作用を定量的に評価するためのバイオマーカーとなる可能性を見出した。さらに、このシアリル化糖鎖の特徴構造を特異検出できる抗体の獲得にも成功した。そこで今年度は、これらのシアリル化糖鎖の血中濃度を定量的に評価するための手法を確立することを目的として、獲得した抗体の加工に必要な可変領域遺伝子配列の解析や、抗体の標識化に必要な精製方法について検討を進めた。抗体の可変領域の遺伝子配列の解析では、シアル酸がα2,3、α2,6、α2,9の様式にて結合することを特徴とするシアリル化糖鎖を認識する抗体に共通に用いられる軽鎖遺伝子があることを新たに発見した。この軽鎖遺伝子の配列情報は、目的のシアリル化糖鎖を認識する実用的な組換え抗体の開発に応用できる。また、この遺伝子発現を生体試料から検出できるようにすることで、ケトン食の生体への作用を評価できる可能性がある。一方、シアリル化糖鎖を認識する抗体はIgMクラスの抗体として産生されやすいため、IgMを簡便に濃縮・純化できるカラムクロマトグラフィーによる精製方法を確立した。本方法により、血液サンプルや抗体産生細胞の培養上清より、容易な操作でIgMを高濃度・純度に調製できるようになった。またIgMの機能を維持したまま、ダウンストリームプロセスに直接利用できる中性pHのバッファー中に回収できるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主な目標である、ケトン食の摂取により影響を受けるスフィンゴ糖脂質の分子種の特定に成功しており、最終目標であるケトン食の生体への作用を定量的に評価するための技術の確立に向けて、特定したスフィンゴ糖脂質を特徴付けるシアリル化糖鎖を特異検出できるモノクローナル抗体を獲得し、イムノアッセイによる定量的評価技術の確立に向けて順調に研究が進捗しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度新たに見出した抗体の可変領域の遺伝子配列情報は、ケトン食の生体への作用を評価するための指標として活用できる可能性があるため、引き続き研究を進める。また、確立したカラムクロマトグラフィーの改良により、シアリル化糖鎖を認識するIgM抗体をより高純度に調製できるようにして、目的とする定量評価法の確立に必要な標識抗体の調製へと応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
目標とするケトン食の効能を評価するためのバイオマーカーの探索において、新たなマーカー候補として見出したシアリル化糖鎖を認識する抗体遺伝子を解析する必要が生じたため、必要経費を繰越して当該実験の実施に使用する。
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