2021年度の主な研究成果は2つある.包囲多角形の列挙アルゴリズムの設計と2辺連結誘導部分グラフの列挙アルゴリズムの設計である.それぞれについて説明する. 平面上に与えられたn個の点からなる集合をSとする.Sの点を頂点とする多角形のうち,(多角形に含まれていない)Sの全ての点を内側に含むような多角形を包囲多角形と呼ぶ.例えば,Sの凸包は包囲多角形の一例である.包囲多角形がSの全ての点を含んでいるならば,Sの全域サイクルと呼ばれる.全域サイクルは計算幾何の分野で長年研究されている研究対象であり,理論的に興味深い研究対象である.包囲多角形は,全域サイクルを含む多角形のクラスであり,本研究ではじめて提案されたクラスである.本研究では,点集合Sの包囲多角形を全て列挙する問題を考えた.逆探索法に基づき,n個の点からなる点集合Sの包囲多角形を1つ当たりO(n^2 log n)時間で列挙するアルゴリズムを考案した.さらに,全域サイクルの個数の上界に基づき,包囲多角形の上界を与えることに成功した.また,考案した列挙アルゴリズムをプログラムとして実装し,包囲多角形の実際の個数を数え上げることに成功した. 入力として無向グラフGが与えられたとき,Gの2辺連結誘導部分グラフを列挙するアルゴリズムを設計した.誘導部分グラフを列挙することは,都市部における避難計画を設計する問題への応用があり,実用的にも重要な問題である.避難計画を設計する際は,避難路を複数確保することが望ましいため,連結度の高い誘導部分グラフのみを列挙する問題は実用的にも重要であると考えられる.本研究では,グラフGの頂点数をn,辺の本数をmとしたとき,1つ当たりO((n^3)m)時間でGの2辺連結誘導部分グラフを列挙するアルゴリズムを設計することに成功した.
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