研究課題/領域番号 |
19K11813
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
周 暁 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10272022)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 計算量理論 / グラフ / アルゴリズム / NP困難 / FPTアルゴリズム |
研究実績の概要 |
本研究ではグラフのライドシェアリング問題を解く効率のよいアルゴリズムの設計論を構築するとともに、大規模災害発生時の緊急支援物資輸送などへの応用可能な経路策定方法論を研究目的とする。ライドシェアリング問題を含む、実社会で生じる問題のほとんどは一般グラフにおいて理論的にNP-困難であることが示されている。構造がある程度限定されたグラフに制限した場合には、多くのNP-困難な計算問題が多項式時間計算可能であることが予想されている。本研究では、応用上よく現れるグラフのクラスに限定し、ライドシェアリング問題を解くアルゴリズムの設計論を構築し、大規模災害発生時に刻々変化する道路網に対応可能なよりよい緊急支援物資輸送経路を策定することが本研究の目的であった。2020年度の当初研究実施計画通りに研究を進めてきた。具体例として緊急支援物資輸送経路策定問題を取り上げ、それを解く、グラフを木に限定したヒューリスティックアルゴリズムを構築し、その実用性を計算機上で検証した。様々な入力に対して実際にヒューリスティックアルゴリズムの挙動を調べ、木の葉の数がある程度限定されたときに、多項式時間で解くアルゴリズムが存在することが判明した。また、グラフアルゴリズムに関する理論的な展開とアルゴリズムの効率化などに関連研究成果として、1年間に2編の論文として一流国際学術誌と国際会議で発表されている。今後の近似アルゴリズムやFPTアルゴリズムなどの構築に有益である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究ではグラフのライドシェアリング問題を解く効率のよいアルゴリズムの設計論を構築するとともに、大規模災害発生時の緊急支援物資輸送などへの応用可能な経路策定方法論を研究目的とする。2020年度では木のヒューリスティックアルゴリズムを構築し、その実用性を計算機上で検証した。詳細について次のようになる。グラフのライドシェアリング問題の入力としている目的地(終点)が1点に限定し、問題の入力としている車両は木の葉に配置されたときに、理論と実験での検証を行った。また、木の次数や木の枝の重みが変化させ、アルゴリズムの挙動も調べた。ライドシェアリング問題の入力サイズの特徴や木の次数、木の葉の個数の特徴を用いて、計算量が抑える方法をある程度を発見した。計画とおり、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
いままで検証で得られた木のヒューリスティックアルゴリズムはライドシェアリング問題の入力サイズの特徴や木の次数、木の葉の個数にある程度を限定したものである。限定された条件の特徴を分析し、より一般的な木のライドシェアリング問題を解く効率的なアルゴリズムを研究開発することを継続する予定である。さらに、木に対する結果を拡張し、木より広いグラフクラス、特に外平面グラフや直並列グラフに限定することで、アルゴリズムが正しく動くのか明らかにする。むろん、これは理論的に証明されていることであるが、それらのグラフ構造が本当に必要不可欠なのか調査する。これにより、グラフ構造とアルゴリズム手法の関係をより詳細に解明する。 また、応用上許容される時間と精度で緊急支援物資輸送経路策定問題の近似解を求めるヒューリスティックアルゴリズムも研究開発予定である。 最終的に得られた成果をまとめる。
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