研究実績の概要 |
本研究は、極小a,bセパレータと呼ばれる、グラフ上の離散構造に関する研究である。特に、極小a,bセパレータを多く持つグラフにはどのような特徴があるかという問いに関心がある。本研究は、3つのテーマ(【問1】~【問3】)に分けて計画されている。 これまでの研究で、「(擬)誘導マッチング数」と「極小a,bセパレータの個数」に何らかの関係があることが徐々に明らかになってきており、本年度では【問1】である”(擬)誘導マッチング数」と「極小a,bセパレータの個数」間の関係を明らかにする。”という問いに対し、以下の成果を得た:(1)極小a,bセパレータの個数が大きいと(擬)誘導マッチング数も大きくなる。(2)ある構造を持つ部分グラフ上で(擬)誘導マッチング数が大きいならば、極小a,bセパレータの個数も大きくなる。 【問1】に対するある種の答えが得られてはいるが、一方で本研究では束の理論からのアプローチをとることも意識しており、その意味では本成果を得るために用いた手法がグラフ理論的な手法によるところが大きく、束の理論での手法や視点に基づいたアプローチが取れていない。同様の結果を、他のアプローチで得るという課題も残っている。 また、成果(2)では、「ある構造を持つ部分グラフ上で」という条件が付いているので、成果(1)の(完全な形での)逆にはなっていない。現時点では、この条件を如何に緩和するか(または取り除けない条件なのか)や別のもっと自然な条件の下で(2)と同等の結果が得られないかを検討している。この条件を、どのようにまたどこまで緩和できるかが今後の課題となる。
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