研究課題/領域番号 |
19K11818
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
山崎 浩一 東京電機大学, 理工学部, 教授 (00246662)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 極小セパレータ / ガロア接続 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績としては、「極小な a, b セパレータに関する既知の結果に対し、ガロア接続の観点で解釈を与えた」が挙げられる。本研究申請時の概要でも触れたが、極小a,bセパレータの束構造を活かしたグラフアルゴリズムの研究にはさらに進展できる可能性がある。本研究結果は、この考えに沿って研究を進めたことで得られた。 具体的には、極小a,bセパレータの列挙アルゴリズムの構築やその正当性の証明で使われていた基本的な性質(既知の結果)を、束論ではよく知られている「ガロア接続」という視点で再考し、既知の結果をガロア接続としての解釈を与えた。 交付申請書に記載した「グラフ(の族)にどのような性質や構造があると、そのグラフ(の族)が極小セパレータを多く持つのかを明らかにすることである」という目的に対し、極小セパレータがなす束構造の考察・分析は重要であり、本研究はまさにこの考察・分析を行ったものである。また本研究の学術的独自性で挙げた「極小セパレータのグラフ理論およびグラフアルゴリズムの二つの研究の流れを融合させる点」とも合致している。 本研究成果の意義としては、ガロア接続及びその隣接分野で知られている様々な列挙アルゴリズムを極小a,bセパレータの列挙に応用する際の足掛かりとなる。また本研究成果は、極小a,bセパレータをClosureとして(積極的に)捉えることで、既存のアルゴリズムの改善や新しいアルゴリズムの開発が期待できることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は所属組織の異動による新組織での環境整備や立ち上げ準備などがあり、大きく進展させることはできなかった。しかしながら、極小a,bセパレータをClosureとして(積極的に)捉えることで、既存のアルゴリズムの改善や新しいアルゴリズムの開発の方向性がより明確になった点は、進捗面では大きいと考える。 一方で、申請時に計画していた「潜在的極大クリーク全体やbramble全体が何らかの代数的構造を持つのか?」という問いに対しては、ほとんど進展がない。むしろ研究が進むにつれ、「極小a,bセパレータの束構造を活かしたグラフアルゴリズムの可能性」が、申請時に考えていた以上に高いことが徐々に明らかになってきた。「さらなる可能性に気付いた」という意味では進展があったと考えられるが、その気付きから得られる具体的な成果が得られていないという意味では進展はない。この「気付き」は具体的には、「Join (Meet) Irreducibleの観点から極小セパレータの集合を考察する」ことの重要性である。
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今後の研究の推進方策 |
極小a,bセパレータをClosureとして(積極的に)捉えることで、既存のアルゴリズムの改善や新しいアルゴリズムの開発の方向性がより明確になったため、その方向性に沿って研究を進める。具体的には、ガロア接続及びその隣接分野で知られている様々な列挙アルゴリズムを極小a,bセパレータの列挙に適用することを試みる。 申請時に計画していた「潜在的極大クリーク全体やbramble全体が何らかの代数的構造を持つのか?」という問いの優先順位を下げ、「Join (Meet) Irreducibleの観点から極小セパレータの集合を考察する」を優先する。この優先する考察は、申請時に挙げた「指数個の極小セパレータを持つグラフの集合族が共通して持つ性質や構造は何か?」という問いと関係している。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は所属組織の異動による新組織での環境整備や立ち上げ準備などがあり、当初予定ほどのエフォートを割くことが出来なかったため。すでに研究期間を延長し、翌年度に当該助成金を当初予定した計画に従い使用する予定である。
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