本研究の結果を五つに分類して述べる(1)二次元磁気記録では,データを物理的に二次元状に並べて記録する.本研究では,これまでに与えられていた二次元誤り訂正のためのLDPC符号の構成方法を拡張し,トラックの方向により長い二次元上の誤りを訂正できるような符号構成方法を与えた.(2)通信路の制約として,バランス制約と呼ばれる典型的な制約がある.最近Dubeらによって,Pacmanアルゴリズムに基く符号化方法が提案され,冗長性の小さい符号が提案されてきた.本研究では,このアルゴリズムを基礎にして,テーブル参照型の符号化を提案し,その冗長度が log i (iは,情報記号長)であることを理論的に示した.(3)MAMR(MicrowaveAssisted Magnetic Recording)では,マイクロ波を用いて超高密度記録を達成する.この方法に対して加法的通信路のためのマルチユーザ符号と通信路推定の技術を応用した.(4)近年,Polar符号やPAC符号(Polarization‐ adjusted Convolutional code)のように,比較的短かい符号長で非常に性能のよい符号が提案されている.記録符号として応用するために,こうした符号の特性を詳しく検討した.(5)ネットワーク環境においてストリーミングの情報を効率よく送信するための方法として符号化キャッシングがある.これは,分散ストレージを効率的に利用して,情報をキャッシングすることで,ネットワーク資源を有効利用する方法である.この方法では,どのように分散してキャッシングを行うのかが重要な問題となる.これまでの方法では,利得を得るために,非現実的なほど多くのキャッシングファイルを必要としていたが,利得を犠牲にしながら,キャッシングのためのファイル(ディスク)の数を抑えるような符号の構成方法を見出した.
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