研究課題/領域番号 |
19K11830
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
北原 知就 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (10551260)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 線形計画問題 / アルゴリズム / 単体法 |
研究実績の概要 |
2020年度は、(a)線形計画問題に対する新しいアルゴリズムの検討、(b)線形計画問題に対するアルゴリズムの最近の研究動向の調査、の2点を行った。それぞれの詳細は、次の通りである。 (a)線形計画問題に対する新しい発想のアルゴリズムの検討:本研究の究極的な目標は、「線形計画問題に対する強多項式アルゴリズムが存在するか否か」という未解決問題の解決にある。研究代表者には、この未解決問題の解決のためには、線形計画問題に対する既存のアルゴリズムとは異なる発想のアルゴリズムが必要ではないか、という問題意識がある。このような問題意識に基づき、他の研究者と活発に議論を行い、代数的、幾何的といった様々な視点から詳細な検討を行った。他の研究者との交流によって、独善的な思考に陥らず、多様な視点を獲得できたことは、今後の研究を遂行する上でも非常に有益であった。検討の結果は、まだ具体的なアルゴリズムの提案には至ってはいないものの、形になりつつあり、次年度以降で線形計画問題に対する新しいアルゴリズムを発表できる可能性がある。 (b)線形計画問題に対するアルゴリズムの最近の研究動向の調査:2020年度に、Chubanovによって、多面体の頂点上の最適化問題に対する、スケーリング法に基づいたアルゴリズムが提案された。Chubanovの研究には、研究代表者らの研究成果を改善する結果が含まれていた。そこで、Chubanovのアルゴリズムの本質を把握し、さらなる改善につなげるため、徹底した検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は線形計画問題に対する新しいアルゴリズムの検討を詳細に行うことができた。他の研究者と徹底的に議論を行うことで、独善的な思考に陥らず、様々な視点を吸収することができた。検討結果は実を結びつつあり、次年度以降に線形計画問題に対する新しいアルゴリズムを発表できる可能性がある。これ以外にも、文献調査によって、次年度以降につながる問題意識を獲得できた。以上の点を考慮すると、本研究課題は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は主に、(a)線形計画問題に対するに対する新しいアルゴリズムの開発、(b)線形計画問題に対する最大改善規則の単体法の解析、(c)整数計画問題に対する一般化単体法の数値実験による検証、の3つの研究を行いたいと考えている。それぞれの詳細は以下のとおりである。 (a)線形計画問題に対する新しいアルゴリズムの開発:2020年度の研究によって、線形計画問題に対する新しいアルゴリズムの開発につながる下地ができた。2021年度はこの研究をさらに推し進め、新しいアルゴリズムを開発し、発表することを目指す。 (b)線形計画問題に対する最大改善規則の単体法の解析:線形計画問題に対する単体法のピボット規則の一つに、最大改善規則がある。このピボット規則はよく知られているが、反復回数の上界に関する研究があまり行われていない。そこで、2021年度はこのピボット規則を詳細に解析し、反復回数の上界に関して新たな結果を得ることを目指す。 (c)整数計画問題に対する一般化単体法の数値実験による検証:最近、Chubanovによって、整数計画問題に対する一般化単体法が提案された。整数計画問題は幅広い応用をもつ重要な数理最適解問題であるが、Chubanovの研究では、提案アルゴリズムを実際の問題に適用したときの挙動が示されていない。そこで、2021年度は一般化単体法に対する詳細な数値実験を行うと共に、得られた知見からアルゴリズムの改善につなげられないかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請時には、国内外の学会に参加し、最新の研究成果を吸収することと、他の研究者との交流を重視し、旅費を多めに計上していた。しかし、新型コロナウイルスの発生により、関連学会のオンライン化や延期が相次ぎ、2020年度は一度も出張を行うことができなかった。そのため、旅費として予定していた研究費を使用しなかっため、次年度使用額が生じている。2021年度も関連学会の中止・延期が予想されるため、旅費として予定している研究費の執行は困難が予想されるが、研究の遂行に必要な書籍の購入や、計算機環境の整備に研究費を充てていきたいと考えている。
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