【研究背景】近年,日本は地震,台風などの自然災害が続出していることから,ライフラインネットワークの災害耐性,頑健性の向上が急務となっている.交差グラフ上の最大迂回度要節点問題や最大影響度要節点問題を解くアルゴリズム開発により,ネットワーク伝達において最も重要となる設備の識別が可能となる.これらの設備に対して稼働率を向上させることで,コストパフォーマンスの高いライフラインネットワークの頑健化,安定化が実現可能となる.本研究は,災害耐性強化を目的としたグラフ理論アプローチによるライフラインネットワークの頑健化に寄与するグラフアルゴリズムの開発を目的とする. 【研究目的】本研究は通常のグラフでは膨大な計算時間を必要とする最大迂回度要節点問題や最大影響度要節点問題に対して,対象とするグラフを交差グラフクラスに限定させて,時間効率的な問題解決アルゴリズムの開発に挑戦するものである.交差グラフのクラスの多くはネットワーク構造を有する現実のインフラのモデル化に利用されており,これらの問題を解くアルゴリズムを応用することで,費用対効果の高いメンテナンスが実現可能となる. 【研究成果】2021年度は円弧グラフの最大迂回度要節点を導出する効率的アルゴリズムの開発を行った.円弧グラフは区間グラフのスーパークラスのグラフであり,環状型モデルから構築されるグラフである.我々は2020年度に区間グラフに対する同問題のアルゴリズムを拡張する方法によってのアルゴリズム開発に挑戦したが,環状型モデルへの適合が困難であった.2021年度では,我々は円弧グラフに含まれる最短周閉路に着目し,要節点が最短周閉路に含まれるか否かによって迂回度の上限値を導出する方法を発見した.これを利用して,時間計算量O(n^2)で円弧グラフの最大迂回度要節点を導出するアルゴリズムを開発した.
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