研究課題/領域番号 |
19K11838
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三好 直人 東京工業大学, 情報理工学院, 教授 (20263121)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 確率モデル / 無線通信ネットワーク / 空間点過程 / 確率幾何 / 性能解析 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,無線通信ネットワークにおける無線ノードの不規則な配置を空間点過程と呼ばれる確率過程を用いてモデル化した空間確率モデルについて,特に基地局が無数に設置された超高密度ネットワークに焦点を当て,モデル化ならびに解析法の検討を行っています.2019年度の研究実績は以下の通りです. まず1つ目として,ジニブル-ポアソン・クラスタ点過程と呼ばれる点過程に対して,接触距離分布と最近隣距離分布の解析を行いました.一般に,点過程Φの接触距離とは空間の任意の位置から最も近いΦの点までの距離のことを言い,最近隣距離とはΦの任意の点から最も近いΦの別の点までの距離のことを言います.無線通信ネットワークの空間確率モデルにおいては,任意のユーザ端末からそれが通信している基地局までの距離として接触距離が用いられる一方,最近隣距離は端末間通信における通信端末間の距離として用いられます.また,ジニブル-ポアソン・クラスタ点過程は,無線基地局が極端に集中して配置される地域とあまり配置されない地域が混在するような場合をモデル化するものです. もう1つの研究成果として,待ち行列等へ客が集団で到着するときに集団サイズの期待値が無限大になる場合の到着過程について調べました.これは無線通信において,極端に大きな通信データ量の需要が現れる場合をモデル化するものです.ここでは,従来からある詳細パルム分布をさらに一般化した広義詳細パルム分布という概念を定義しています. これら2つの成果はともに待ち行列と確率モデルに関する国内の研究シンポジウムで発表しました.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
論文の投稿が少し遅れていますが研究成果は積みあがっており,複数の論文について投稿できる準備が整いつつあります.
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今後の研究の推進方策 |
計画調書に上げた以下の3つの課題のいずれも結果がまとまりつつあります. (1)無線ノードの配置に相関のあるセルラネットワークのモデル化と解析,(2)基地局の設置密度を無限大にしたときの極限モデルとそれを用いた近似評価,(3)移動体のハンドオーバ制御方式の提案とそのモデル化,解析および評価. (1)については解析の段階は終了しており,あとは数値実験を重ねて結果の考察に入る予定です.(2)についても解析はほぼ終わっており,さらなる拡張ができないか検討する予定です.(3)については論文の草稿ができており,近いうちに投稿する予定です.その他,2019年度の実績の欄にも書きましたが,今後は基地局の配置に加えて,通信データの発生パターンを考慮したモデルの検討をしていきたいと考えています.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由の1つとして,論文の執筆が少し遅れており,当初予定していた国際会議への参加を断念したことがあげられます.また,3月に予定していた出張がすべて中止になったこともあります.今年度は数値実験をさらに加速させるため,主に研究協力者が使用する数値実験用のPCを既に購入しています.あとは参加を予定している国際会議等が予定通り開催されれば順当に使用できる計画です.
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