研究課題/領域番号 |
19K11840
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
福田 秀美 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (40726361)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多目的最適化問題 / 非単調直線探索 / メリット関数 / 最適性条件 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は多目的最適化問題に対する新たな手法の開発とその理論解析および異分野への応用である.ここでは特に,多目的最適化問題に対する降下法とよばれる方法に着目する.令和元年度に得た研究成果は以下のとおりである. (a) 多目的最適化問題に対して,非単調直線探索を用いる降下法を提案した.ある程度関数値の増加を許してステップ幅を選べる非単調直線探索として,最大値型及び加重平均型の2つのアプローチを考えた.探索方向としては最急降下法,ニュートン法及び射影勾配法を用いた.また,直線探索について,ハイブリッド型手法も提案し,全ての直線探索と探索方向の組み合わせに対して,大域的収束性を証明した. (b) 非線形多目的最適化問題に対するメリット関数を提案した.メリット関数は,問題の解との近さを表す非負関数であり,解の性質やアルゴリズムの収束性の解析に役立つ関数である.ここでは,提案したメリット関数を用いて,パレート解の存在性や有界性などの一般的な性質を解析した.さらに,近接勾配法と呼ばれる手法の計算量を評価した. (c) 無制約な多目的最適化問題に対するニュートン法は,目的関数のヘッセ行列の正定値性が必要であり,部分問題は難しい2次制約付き2次計画問題となる.その2つの欠点を改善する新しい手法を提案して,適当な仮定のもとで大域的に収束することを示した. (d) その他の内容として,対称錐計画問題に対して,シーケンシャル最適性条件という新しい最適性条件を提案した.さらに,その最適性条件を用いて,非線形2次錐計画問題に対する拡張ラグランジュ法について,より良い収束定理を示した.さらなる研究内容として,無線通信方式の一つであるLoRaネットワークについて,スループット公平性の改善を保ちつつ,消費電力の減少を考慮した問題を考えた.その問題は混合整数非線形計画問題となり,効率的に解く手法を提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度の計画には,探索方向を生成するために用いる問題を2次制約付き2次計画問題の代わりの最適化問題を考え,さらに非単調直線探索の技術を用いて,手法の効率化を目指すことだった.研究実績の概要(a),(c)の通り,計画通りに研究が進み,非単調直線探索については学術論文も既に出版された.また,計画には無かったが,メリット関数の提案や近接勾配法の収束性の解析も行い,論文も現在執筆中である.さらに,本研究内容と直接関係ないが,対称錐計画問題に関する最適性条件や,無線通信への応用問題についても成果が出たため,全体的には,研究は順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度には,多目的最適化問題に対して新たなメリット関数を提案し,様々な仮定の下で,収束率の解析に重要な役割を果たすエラーバウンドについて考える.ここで,大規模な多目的最適化問題に対して,良く用いられるL1正則化項を含めた問題なども対象とする.さらに,他の研究内容として,令和元年度にはニュートン法を改善する手法を提案したが,より効率な方法を目指すため,その解法で用いる部分問題の行列の選び方を工夫する必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度にはもう一つの海外出張を予定していたが,予定が合わなかったため,参加することができなくなった.よって,予算が余った.令和2年度には,新型コロナウィルスの影響で,国際学会が既にキャンセルされ,外国人研究者の訪問も難しいと予想される.しかし,令和2年度の間に可能であれば,招へい外国人研究者のために使用する予定がある.
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