研究課題/領域番号 |
19K11843
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
池上 敦子 成蹊大学, 理工学部, 教授 (90146936)
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研究分担者 |
伊藤 靖彦 成蹊大学, 理工学部, 研究員 (50838993)
加藤 晴康 成蹊大学, 理工学部, 研究員 (60838994)
呉 偉 静岡大学, 理工学部, 助教 (90804815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スケジューリング / 最適解の分布 / 多様性と類似性 / 公平性 / ロバスト |
研究実績の概要 |
潜在的な制約条件や評価尺度などの暗黙知を含む問題に対し,課題1:最適解の分布を提供,課題2:公平性を持つ解を提供,課題3:ロバストな解を提供,に取り組んでいる. 2020年度は,課題1はナーススケジューリングを対象に,課題3はマシンスケジューリング,そして,課題2は,双方の問題を対象に研究を進め,研究成果を学会等で発表すると同時に,論文にまとめることに力を注いだ. 課題1(ナーススケジューリング)については,基本モデルを改善したモデル(2019年度に提案)を基に,与えられた問題例の制約の強さ(制約が強い部分)を可視化しながら複数解列挙の実験の精度を上げた.そして,結果の分析をおこない論文にまとめた.さらに,改善モデルの求解速度に関する比較実験の成果も論文にまとめた.また,類似な解の列挙については論文が出版された. 課題2については,ナーススケジューリング,マシンスケジューリング,他,スケジューリングで考慮される公平さについて議論した.また,サッカーリーグの対戦スケジューリングの各チームの負荷を公平にするための論文が出版された. 課題3については, 処理時間の不確かさを考慮した単一機械バッチスケジューリング問題の並列処理と直列処理のそれぞれに対して総滞留時間を最小化する多項式時間厳密解法を提案したほか,配送時刻が不確定な配送計画問題に対して,メタヒューリスティックを提案した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題1の「最適解の分布を提供する」では,ナーススケジューリングを対象に,1.多様な最適解と類似な最適解の定義,2.多様な解を与えるモデルと高速アルゴリズム,3.1と2の結果を基に最適解の分布を表現する,4.情報提示システム(プロトタイプ)を構築する,を目指している. 項目1の多様な解については,重視する意思決定要素について多様となるモデルを構築した.計算実験では,各意思決定変数が制約式に登場する数を調べ,解空間を狭める要素として考えるとともに.重視する決定要素として扱った.そして,それらの要素の可視化や,それと連動した解の表示方法を考案した.類似な解の列挙に関する論文が出版されるとともに,項目1と2に関する成果を論文にまとめた.さらに,項目3については,最適解の分布の表現方法について検討し,それを得るためのアルゴリズムの設計までおこなった. 課題2の「公平性を持つ解を提供する」では,負荷割当平準化問題に対し,好ましくない量を指数関数(例えば2次関数)で表し,それを線形近似して扱っている.区分幅で1では厳密性を落とさないことに対し,大きな区分幅で得た解を使って元問題の下界と上界を得る計算実験も行った.また,サッカーリーグの対戦スケジューリングの各チームの負荷を公平にするための論文が出版された. 課題3の「ロバストな解を提供」については, 1. 処理時間の不確かさを考慮した総滞留時間最小化単一機械バッチスケジューリング問題に対して並列処理と直列処理の両方を考慮し,それぞれの設定の下で多項式時間厳密解法を提案した.2. 最大リグレット最小最短路問題に対する上下界評価を用いた局所探索法を対案した.3. 周期性を考慮する配送計画問題に対して,配送時刻が不確定な場合の一般化問題に対して,局所探索に基づくメタヒューリスティックを提案した.
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今後の研究の推進方策 |
課題1の「最適解の分布を提供する」では,引き続き,多様な解を高速に取得する方法に取り組む.多様な解として得られた比較的少ない数の最適解からそれらの間にある解,それぞれに対する類似な解の求め方について整理する.そして,その方法で計算実験を行い,その結果の可視化に取り組む. 課題2の「公平性を持つ解を提供する」では,スポーツスケジューリング問題に対して,公平性の重要な評価であるcarry-over effectを考慮し,carry-over effectが最小となる対戦スケジュールを求めるメタヒューリスティックを構築する. 課題3の「ロバストな解を提供する」では,最大リグレット最小化基準の下で,全ての組合せ最適化問題に適用できる近似解法を設計することを目指す
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大防止のため,参加を予定していた国際会議や国内学会が中止,もしくは,オンライン開催になったことと,研究打合せ等の出張ができなかったため,出張費の出費がなく,全体的に繰り越す形になった. 研究最終年にあたり,研究成果をまとめることや,成果発表を予定していた2021年度も,海外出張は見込めないため,研究分担者を含む関連研究者との研究打合せや,関連研究者との議論を行うための講演会を企画する予定である.そのための国内出張費や講師謝金を利用するだけでなく,オンラインで効率よく議論するためのツールも購入予定である.また,研究補助者への謝金も予定している.
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