研究実績の概要 |
前年度に,経時的に測定される歪んだ分布形状を呈する連続アウトカムに対する中央値の群間差の推測法(Statist. Med., 36, 2420-2434, 2017)のRプログラムパッケージ”bcmixed”をCRAN(The Comprehensive R Archive Network)に登録したが,その利用法についての詳細な解説が未実装であり,利用可能性に難があった.したがって,その解説論文を執筆しThe R Journalに投稿し,掲載された(The R Journal, 13(2), 253-265, 2021).そこでは,上記Stat. Med.誌の掲載論文の理論的要約,プログラムパッケージの利用法及び利用事例を詳細かつわかりやすく記述し,開発されたパッケージの利用可能性の向上が上昇した.すでに当該論文の引用もされ始めており,当該研究の波及効果の向上に寄与した.一方で,現在ロバスト分散の性能評価を実施中である.途中成果は,次のとおりである:近年,Golden et al. (Econometrics, 7, 1-27, 2019)により,欠測値を伴う経時データ解析であってもロバスト分散により最尤推定量の漸近分散が一致推定可能であることが示された.しかし,漸近理論の成り立たない有限標本下でのロバスト分散の妥当性は明らかになっていない.本研究では,ランダム化比較試験を想定したシミュレーション実験を通し,有限標本下でのロバスト分散の性能を評価した.症例数が少ない場合にはロバスト分散は小標本バイアスをもつが,バイアスの程度は一貫してナイーブ分散より小さく,実用上での有用性を示した.本成果は論文として投稿済みであり,現在査読コメント対応中である.
|
今後の研究の推進方策 |
投稿中のロバスト分散の実装の論文について,掲載に向けてリバイス作業を引き続き進める.また,本研究課題の成果(Maruo et al., Statist. Med., 39, 1264-1274, 2020)で,mixed models for repeated measures (MMRM)法において,一般的な統計ソフトウェアで仮定される位置パラメータと尺度パラメータの直交性の弊害を指摘したが,直交性を仮定しない推測法は実行が困難なため,直交性を仮定しないMMRM法を実装したRプログラムを開発中であり,2022年度中の公開を予定中である.
|