研究実績の概要 |
最尤推定量は,理論的にモデル誤特定の下でサンドイッチ型の漸近分散共分散行列をもつ.その経験的推定量(ロバスト分散推定量と呼ばれる)は一致性をもつため,この推定量はモデルの誤仕様の下でも漸近的に妥当である. 実際に,ロバスト分散推定量は経時データ解析における標準誤差の推定に用いられる.最近,Golden et al. (2019 Econometrics, 7, 1-27) は,欠測メカニズムがランダムでない欠測である場合でも,最尤推定量が欠測データの存在下でサンドイッチ型の漸近分散共分散行列を保持することを明らかにした.彼らは,モデルの誤仕様化と欠損データの両方が同時に存在する場合のロバスト分散推定量の漸近的妥当性を明らかにしたが,有限標本での性能は調査されていなかった.我々は,シミュレーションにより経時データをアウトカムとしたランダム化比較試験の文脈においてロバスト分散推定量の有限標本性能を評価し,その小標本の問題点を明らかにし,論文化した(Ishii R, Maruo K, Doi M, Gosho M. Commun. Stat. Simul. Comput., 2022, doi: 10.1080/03610918.2022.2084107).そこでさらに,AIDSを対象としたランダム化二重盲検試験の縦断的なCD4カウントデータを用いて,ロバスト分散推定量の具体例を提示した.
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