研究課題/領域番号 |
19K11850
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
赤平 昌文 筑波大学, 数理物質系(名誉教授), 名誉教授 (70017424)
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研究分担者 |
青嶋 誠 筑波大学, 数理物質系, 教授 (90246679)
小池 健一 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90260471)
矢田 和善 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90585803)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 切断分布族 / 最尤推定量 / 2次の漸近平均 / 2次の漸近分散 / 2次の漸近損失 |
研究実績の概要 |
正則な面を部分的にもつ広義の非正則モデルは、特に非正則な面が既知の場合には正則モデルになり、一方、正則な面が既知の場合には非正則モデルになるので、正則と非正則の双方をつなぐモデルとして重要である。そのモデルの典型として切断指数型分布族のモデルが考えられるが、特に、ファイナンス、物理学、水文学、地質学、天文学等の様々な分野において重要な(上側切断)パレート分布を含む、自然母数と切断母数をもつ切断指数型分布族において一方の母数を局外母数としてもう一方の母数の推定問題が検討されてきた。しかし、分布族を切断指数型に制約することが本質的なのかという問題が生ずる。本研究において、関心のある母数θと切断母数γを含む片側切断分布族についてγを局外母数としてθの推定問題を考え、γが既知の場合のθの最尤推定量ML(γ)とγが未知の場合のθの最尤推定量MLを漸近的に2次のオーダーまで比較した。まず、γが既知の場合のθのML(γ)の確率展開を求め、そこから2次の漸近平均と2次の漸近分散を求めた。また、γが既知の場合のθのML(γ)と同じ2次の漸近平均をもつように補正した(γが未知の場合の)θの最尤推定量ML*についても同様なことを行った。その上で、γが既知の場合のθのML(γ)に対するγが未知の場合のθのML*の2次の漸近損失、すなわち、γが既知の場合のθのML(γ)の2次の漸近分散とγが未知の場合のθのML*の2次の漸近分散との差を求めた。その損失は、スコア関数の分散に対する、切断点γにおけるスコア関数の値からスコア関数の平均までの距離の比として表現されている。これらの結果は片側切断指数型分布族の場合の拡張になっている。また、その例として切断コーシー分布等の場合が挙げられた。従って、分布族を切断指数型に制約することは本質的ではないことが分かり、またその結果の適用範囲は広くなることも分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来、分布族を片側切断指数型に制約して推定論が展開されてきたが、本研究においてその理論をもっと一般の片側切断分布族に拡張することに成功した。このことによって結果の適用範囲が広くなり、切断コーシー分布等も対象に含めることができた。今後、両側切断指数型分布族の場合の結果を、一般の両側切断分布族に拡張できる見通しを得たことは相当な進展であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
従来、分布族を片側切断指数型に制約して得られた結果を一般の片側切断分布族に拡張できる目処がついたので、一般の両側切断分布族のおける最尤推定について考えるとともに、ベイズ推定についても考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大により、参加を予定していた学会、研究集会等の開催が中止になったため、次年度使用額が生じた。次年度は、現在使用している設備がやや古いので、新しいパソコン等を導入して研究の更なる促進を図りたい。
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