研究課題/領域番号 |
19K11851
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
内藤 貫太 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (80304252)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | パターン認識 / 機械学習 / ダイバージェンス / 誤差限界 / 一致性 / カーネル法 |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載のように、2019年度からの3年間で3つのサブテーマを掲げ、それらの研究が糾う中で、関数推定の研究を更に太く推進する。2019年度は2つのサブテーマでの実績が得られた。 サブテーマ「様々な関数推定法の評価」における実績としては、高次元パターン認識で有効となる判別手法の構築とその理論的評価、そしてステージワイズ最小化による回帰関数推定の理論の構築が挙げられる。高次元パターン認識においては、カーネル・ナイーブ・ベイズ判別分析手法とその平滑化バージョンを構築・提案し、その高次元での漸近的結果を導出すると共に、様々な高次元小標本データへの適用を通して、その有効性を確認できた。また、ナイーブ・正準相関という判別手法に現れる固有根の高次元漸近理論を構築した。それを用いることで、誤判別率の見積もりが可能となった。ステージワイズ最小化という機械学習に基づく回帰分析アルゴリズムを提案・構築し、そのアルゴリズムで得られる推定量のリスクの非漸近的誤差限界を導出した。アルゴリズムを反復することで推定量が作られるため、推定量の構築には一定の時間を要するものの、最終的に得られる推定量は従来の有効な推定量よりも良い場合があることを、様々な実データへの適用を通して確認できた。 サブテーマ「理論的拡張と深化」では、局所的ダイバージェンスによって得られるパラメータの推定量についての漸近理論を構築したことが実績となる。局所的ダイバージェンスに基づく方法は、局所的でない大域的な従来方法と比較して、漸近的に大域的リスクを改善することが経験的、数値的に知られていた。しかしながらその理論的結果の導出のためには、パラメータの推定量の漸近的一致性の導出が必要であった。局所的ダイバージェンスから導かれるある関数のクラスを構築し、それがボレル・カンテリクラスになることを証明することで一致性が証明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度においては、ナイーブ正準相関というパターン認識手法に現れる固有根の高次元漸近理論に関する論文、ステージワイズ最小化による回帰分析の理論と応用に関する論文、局所的ダイバージェンスに基づくパラメータ推定の一致性に関する論文、カーネル・ナーブ・ベイズ判別分析とその平滑化バージョンの提案とその理論的数値的検証に関する論文が出版された。 局所的ダイバージェンスに基づく密度推定の方法論について、統計関連学会連合大会にて講演発表した。局所的ダイバージェンスに基づく回帰分析に関する理論について、科研費研究集会にて講演発表した。 再生核ヒルベルト空間における適合度検定に関する2本の論文が投稿された。 このように、4本の論文が出版され、2本の論文が投稿された。講演発表も適宜行われており、“おおむね順調に進展している”と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した計画の変更は特に必要ないと判断する。研究計画に記載した3つのサブテーマの研究を引き続き推進する。 サブテーマ「新たな応用の開拓」では、2020年度は歪曲度のノンパラメトリック推定の方法を確立し、その精度評価を行うと共に、歪曲度に基づく多変量解析手法を考案し、従来手法との比較を行う。 サブテーマ「様々な関数推定法の評価」においては、2020年度にはパラメトリックに推定された構造の残差をノンパラメトリックに推定して得られるセミパラメトリック手法の精度評価を行い整理する。 サブテーマ「理論的拡張と深化」では、2020年度には再生核ヒルベルト空間における歪度・尖度を考案し、それらに基づく適合度検定を考案する。 これら3つのサブテーマを統合して、「セミパラメトリック関数推定に基づく統計解析の新たな展開」を総括する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由の1つ目は、2019年度当初、研究成果の発表の機会として首都圏開催の2つの研究集会に参加し、講演発表する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、軒並み自粛・延期となったためである。もう1つの理由は、海外出張中に滞在国でも新型コロナウィルス感染拡大を受け、2週間の出張予定を中断し、1週間で帰国したことによる。 2020年度分助成金と併せての使用計画として、2020年度には、2021年1月開催の国際研究集会へ参加することとなっており、その旅費として利用することになる予定である。
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