研究課題/領域番号 |
19K11854
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
川野 秀一 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (50611448)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スパースモデリング / 主成分回帰 / ベイズモデリング / マルチタスク学習 / テンソルデータ解析 / 関連ベクトルマシン / 構造方程式モデル / 変数併合 |
研究実績の概要 |
昨年度より引き続き予測と関係性把握を同時に行う統計手法の研究に取り組んだ.令和2年度では以下に挙げる研究成果をあげた. 1. 令和元年度に開発した主成分回帰モデルに対し,計算時間や調整パラメータの頑健性を大規模シミュレーション実験を通して検証した.提案手法を計算するRパッケージspcr-svdを作成し,一般に公開した.本研究成果は原著論文としてまとめられ、国際学術雑誌に掲載された. 2. 各サンプルに別個のモデルを仮定して予測モデルを構築するマルチタスク学習の研究に取り組んだ.Hallac et al. (2015)が提案したネットワークlassoの枠組みの下,回帰係数の併合を促す正則化項をベイズ理論の観点から捉え,Dirichlet-Laplace事前分布に基づくベイズ的マルチタスク学習を提案した.数値実験を通して有用性を検証し,現在原著論文として投稿準備中である. 3. 昨年度と同様に,予測を行う統計手法,または関係性把握を行う統計手法の研究についてもそれぞれ取り組んだ.予測を行う統計手法については,多重関連ベクトルマシンの安定性を狙った事前分布を導出し,その事前分布に基づくベイズモデリングを提案した.関係性把握を行う統計手法については,テンソル構造を有するデータを扱うことが可能な共通成分分析を,クロネッカー積の枠組みで提案した.提案手法を計算するソフトウェアを,統計ソフトウェアR のパッケージMCCAとして作成し公開した.また,構造方程式モデルの枠組みで記述される因果媒介分析モデルに対し,媒介変数をスパース部分的最小二乗回帰により新たな変数として構成し,より少ない媒介変数に基づく因果媒介分析モデルを提案した.これらの研究成果は学会等で発表するとともに,いくつかの成果は原著論文として現在投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度より取り組んでいた主成分回帰モデル,順序ロジットモデルの研究成果が学術雑誌に掲載された.多重関連ベクトルマシンおよびテンソルデータに対する共通成分分析の研究成果をプレプリントとして発表することができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度と令和4年度は以下の課題に取り組む. 1. 理論的・数値的な観点からこれまで開発してきた統計手法を徹底的に検証する.例えば,提案した計算アルゴリズムの計算量解析,モンテカルロ・シミュレーションによる大規模な数値比較について検討する. 2. 説明変数の値が二値を取る主成分回帰モデルの研究に着手する.研究を遂行するために必要な知識・技術については令和2年度までに既に習得済みであるため,モデルおよび計算アルゴリズムの開発を進める.また,説明変数の値が多値を取る場合への拡張可能性についても検討する. 3. 上記1と2で提案する統計手法のソフトウェアを作成し,一般に公開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:コロナ禍の影響で当初予定していた執行計画を大きく変更したため. 使用計画:研究を遂行するために必要な統計科学関連,最適化関連,情報科学関連分野の図書の購入,解析プログラム開発補助のための研究補助員に対する謝金,採択された学術論文をオープンアクセスにするための費用等に充てる計画である.
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