本研究では,予測と関係性把握を同時に行うことができる統計手法の開発を目的としている.令和元年度から令和3年度にかけては,スパース主成分回帰モデル,ベイズ的スパース凸クラスタリング,Dirichlet-Laplace事前分布に基づくベイズ的マルチタスク学習モデル,テンソル構造を有するデータを扱うことが可能な共通成分分析モデルをそれぞれ開発してきた.得られた研究成果は,国内外の学会・シンポジウムで発表するとともに,原著論文として学術雑誌に発表してきた.以下は令和4年度に得た研究成果である. 1. 令和元年度より取り組んでいる共スパース因子回帰モデル,および昨年度より取り組んでいる組成データを扱うことが可能なマルチタスク学習モデルについて,さらなる理論的・数値的検証を重ねた.プレプリントとしてまとめていた当該論文にそれぞれこれらの結果を付け加えることにより,提案手法をブラッシュアップさせることができた.これらの研究は,国際学術雑誌に掲載された. 2. マルチタスク学習において,タスクがクラスタを形成している状況を考慮に入れた方法論の開発に取り組んだ.クラスタ構造を抽出するために,凸クラスタリングに基づく方法を開発し,ブロック座標降下法による計算アルゴリズムを提案した.提案手法の有効性をシミュレーションと実データへの適用を通して検証した.本研究は,現在原著論文として国際雑誌に投稿準備中である. 3. 昨年度取り組んだベイズ的併合型モデルに対し,目的変数に二値データを扱うことが可能なスパースベイズモデリングの開発に取り組んだ.スパース性を促す事前分布には馬蹄事前分布を採用し,尤度関数をPolya-Gamma分布を用いて表現することにより,ギブスサンプリングを構成した.モンテカルロ・シミュレーションによる数値実験を通して,提案手法と既存手法を比較検討した.
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