水産資源の持続的かつ有効な利用には,資源量の時間的変化に加えて,資源の時空間分布を適切に捉えることが望ましい.時空間分布の推測のために,漁業および調査などのプラットフォームから観察情報を取得する.しかしながら,水産生物の場合には直接観察することができず,海洋環境の影響により空間分布の変化だけでなく産卵量や生残率など様々な要因も変動をする.そこで本研究では,水産資源解析高度化のための時空間モデルの基盤確立と応用を目指し,高度回遊性の水産資源を対象に,生物の空間分布のパターンやその時間的変化を理解するための統計モデリングとその推定法の開発を研究目的とした. まずマグロ類資源に対する研究として,インド洋メバチマグロを対象に,日本,韓国,台湾の延縄漁業データを用いて,空間情報から資源動態を表す指標であるCPUEの抽出を国際共同研究の一環として行い,その結果は当該種の総漁獲量設定の基礎情報として実際に利用された.また,漁獲におけるサイズ選択性に依存しないようなサイズ別の時空間分布モデルの適用を行い,マグロ類の国際会議において報告を行った.さらに,将来の気候変動によるマグロ類資源の分布の変化についてのモデリングを試みた. このほか,北太平洋のサンマ資源の時空間分布構造について,国際共同研究としての成果を共著で論文化した.また,これとは別に海棲哺乳類種のトドや鯨類について,調査海域内の分布の経年変動を捉えるための解析も行うとともに,それと関連した資源量推定についての論文も科学誌に掲載した.
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