研究課題
関数データとして与えられた説明変数と目的変数との関係をモデル化する関数回帰モデリングに関する研究を行った。関数回帰モデルには、データの形式に応じて様々な種類がある。本研究では、目的変数も関数データで与えられた回帰モデルで、特に時間の関連を考慮に入れたhistorical functional linear modelに対して、変数選択を行うためのスパース推定法を導入した。提案したモデリング手法を気象学のデータへ適用し、台風の進路に関連している情報の選択を行った。当該研究は国内英文誌へ採択された。また、農作物の収穫量と、生育期間中の環境要因との関係をモデル化する方法について検討を行っている。多段トマトのように長期にわたり生育・収穫される農作物は、環境要因の収量への影響が、季節に応じて変化するものと考えられている。そこで本研究では、目的変数(収穫量)が関数データではないが、説明変数(環境要因)以外の情報(季節)に依存する状況において用いられる、変化係数関数回帰モデルに基づくモデリングを行った。特に、環境要因と収穫量の複雑な関係を表現するためのモデルとして、変化係数関数加法モデルを提案した。提案した手法は論文としてまとめ、プレプリントとして公開している。さらに、変化係数関数回帰モデルをスパース推定に基づいて推定する方法を検討し、収穫量に関連している環境要因の組み合わせを選択した。当該研究は国際会議(オンライン開催)で発表した。
2: おおむね順調に進展している
Historical functional linear modelに対するスパース推定については、今年度内の論文採択を目指していたため、これを実行することができた。変化係数関数加法モデルについては、数値実験や実データ解析による有効性の検証が予定通り実行できた。また、理論的性質についての研究についても、予定通り継続して行っている。変化係数関数回帰モデルに対するスパース推定については、目標としていた年度内での学会発表が達成できた。来年度には論文として投稿できる見込みである。
変化係数関数加法モデルに対しては、理論評価を引き続き検討し、論文を加筆修正した上で国際誌へ投稿、採択を目指す。変化係数関数回帰モデルに基づくスパース推定の研究についても、まずはプレプリントとして研究成果を発表した上で、国際誌へ投稿する。近年、説明変数が関数データとして与えられた関数線形回帰モデルにおいて、特定の時点までの説明変数が目的変数と関連しているというその時点を、スパース推定を利用して選択する方法が発表された。本研究では、この方法を変化係数関数回帰モデルへ適用することで、トマトの収穫量に関連がある環境要因の期間を選択することを検討している。
コロナ禍により予定していた出張が中止、延期またはオンライン対応になったため。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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