研究課題/領域番号 |
19K11859
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
竹内 惠行 大阪大学, 経済学研究科, 准教授 (60216869)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 統計学史 / 数理統計学 / 科学技術研究 / 統計的品質管理 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本における数理統計学の導入・浸透・定着を、数学や統計学だけでなく、生物学、工学、心理学などの応用分野への普及の実態を通じて、その動的プロセスを文献資料と関係者の証言から構成し、明らかにすることを目的としている。具体的には科研費基盤(C)助成研究(平成24~27年度)「日本における数理統計学の受容と関連諸分野への波及」の補完・拡充を、[a] 教育機関のカリキュラムの考察、[b] 啓蒙書の考察、[c] 各種技術普及団体の考察、[d] 統計学者・統計家へのインタビュー調査の4研究によって行うものである。 2021年度においては、以下の研究を行った。[c]各種技術普及団体として、(統計的)品質管理の普及・促進を担った日本規格協会、日本科学技術連盟、中部品質管理協会を取り上げ、その設立から1960年頃までの発展経緯についての文献調査を行った。また戦前の技術普及団体と比較するために、1910年代から始まった科学的管理法の普及・促進団体についての文献調査を行った。これらの管理技術は海外から導入されたものであるため、翻訳プロセスを経ていることは明らかである。本研究では海外から導入された管理技術は文化中立的ないし言語中立的でないという仮説に立ち、Lawrence Venutiなどの言語学における翻訳理論などを援用した分析を試みた。その成果の一部は2022年度に英文書籍の一章(contributed article)として公表する予定である。また、日本ホワイトヘッド・プロセス学会第42回大会(2020年11月)において報告した研究を、同学会誌『プロセス思想』21巻に論文として刊行した。また間接的に本研究と関連するが、海外における数理統計学の応用史に関する書籍の翻訳を刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度も、新型コロナウイルス感染拡大に伴う諸活動の制限に伴い、研究活動が以下の点で支障をきたすようになった。(1)広域移動の自粛要請や図書館の利用制限により、国内外の出張による文献調査が困難になった。(2)面談を必要とするインタビュー調査の計画や実施が困難になった。(1)についてはデジタル・アーカイブ、図書館間貸借(ILL)の活用や古書の購入などで代替するように努めたが、一次資料へのアクセスは困難であり、研究調査を中断せざるを得ない部分も生じている。加えて、2021年11月に3週間ほど病気入院したことによる研究活動の中断も進捗状況の一層の遅れを招いた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染拡大に伴う諸活動の制限や自粛要請を踏まえ、新型コロナウイルス感染が収束するまで、2021年度と同様に次の方針をとる。(1)文献調査については、インターネット上で公開されているデジタル・アーカイブや図書館間貸借(ILL)、古書購入などの方法を活用する。(2)海外文献調査およびインタビュー調査は当面見合わせる。(3)研究者との議論等は、WEB会議システムを利用する。(4)学会・国際会議の開催が見込めない場合には、書籍や学術誌による発表に切り替える。 その上で、以下の調査を中心に行う。(A) 前々年度、前年度に引き続き、戦中から戦後にかけての高等教育における統計学のカリキュラム調査を行う。特に新制大学の自然科学系一般教育科目として設置された統計学のカリキュラムの成立経緯を国際比較の観点から調査する。2020年度に着手を始めたが、2021年度は実施できなかった1940年~1950年における海外大学の統計学カリキュラムの調査研究を行うとともに、同時期の大学生向け数理統計学テキストの内容調査、検討を行う。 (B) 2021年度に一部着手した、科学的管理や統計的品質管理といった生産管理手法への数理統計学の導入に関する調査研究を行う。これらの手法では、「分散(標準偏差)」という概念が鍵となっているが、これが、どのように日本に紹介され、解釈され、定着するようになったかを、1940年代までの学校教育関係資料や学術書、啓蒙書の調査から分析を行う。(C) 2021年度に引き続き、戦後期(1945年~1950年)に、デミングなどGHQが関連した統計的品質管理に関する講演会、セミナー、研究会に関する文献資料の所在の確認、収集の準備を行う。(D)(B)および(C)の成果を踏まえ、日本の統計的品質管理の形成とその発展に関して、関連する研究者と共同研究会を開催する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染収束を見越して、出張を伴う調査を先延ばしにしていたが、感染拡大に伴い、計画自体を断念せざるを得なかったことに加え、病気入院に伴う研究活動の中断のため、次年度使用額が大幅に生じた。基本的には今年度の使用計画を次年度に繰り延べる形をとるが、新型コロナウイルス感染拡大に伴う諸活動の制限や自粛要請が今後も続く可能性があることを踏まえ、調査・打合せ等の出張が行えない場合には、代替の研究方法の費用として使用することを計画している。具体的には、文献調査については、インターネット上で公開されているデジタル・アーカイブの利用料や古書を含む書籍購入費用、ならびに図書館間貸借(ILL)費用、研究打合せなどでは、WEB会議システムの利用料やクラウドサービスの利用料を予定している。また、研究の最終年度であり、研究成果の英文校正費用や日本の統計的品質管理の形成とその発展に関する共同研究会の開催にかかわる費用に支出することを計画している。
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