研究実績の概要 |
パレート分布の形状母数の推定問題を尺度母数に制限がある場合に適切な条件を満たす損失関数の下で, 小標本, および大標本の観点から考察した. まず, 小標本の観点からは Patra and Kumar (2017) では, 最尤推定量, 改良最尤推定量, 最小リスク不変推定量, Stein型推定量, Kubokawa 型推定量, (あるクラスの事前分布に関する) 一般化ベイズ推定量が提案されていた. そこでは理論的な根拠はなく, シミュレーション結果に基づいてのみStein型推定量を推薦していた. そこで, 今回, これらすべての推定量, および一様最小分散不偏推定量を優越する推定量の導出に取り組み, その結果, これらすべての推定量を優越する推定量を導出することができた. 特に2乗誤差損失関数, エントロピー損失関数, 対称損失関数の下では新しく導出した推定量の良さをシミュレーションによっても確認することができた. 一方, 大標本の観点からは新しく導出した推定量を含む前述の推定量が2次漸近許容的であるかどうかを2乗誤差損失関数の下で考察した. その結果, 新しく導出した推定量, 最小リスク不変推定量, Stein型推定量, Kubokawa型推定量, (特別な事前分布に関する)一般化ベイズ推定量は2次漸近許容的であり, 一様最小分散不偏推定量, 最尤推定量, 改良最尤推定量, (上記以外の事前分布に関する)一般化ベイズ推定量は2次漸近非許容的であることを示した. また, これら非許容的な推定量に対してはそれ自身を優越し, かつ2次漸近許容的となる推定量を構成した.
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