研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,統計的推測の観点からリスク関数を通して,推定量の高次の漸近許容性の理論の構築,および推定量の特徴付けを与えるという問題について,未解決な問題を理論的に明らかにし,その構造を解明することである.今年度は大きく分けて2つの研究を行った.まずは,2変量正規母集団における2つの変量の関係を表す量として相関係数があるが,これと同時に,Szekely, Rizzo and Bakirov (2007), Szekely and Rizzo (2009, 2012) 等で議論された距離相関係数の推測問題を高次漸近理論の立場から研究した.その結果,相関係数の最尤推定量は2次漸近許容的であることが示せたのに対し,距離相関係数の最尤推定量の2次漸近許容性については現在の所,不明の状態である.不明の原因としては,最尤推定量の漸近バイアスを陽に求めることが出来ていないことが挙げられる.Legendre の倍数公式や(超幾何関数の)Euler 関係式を用いることは予想できるが,他にも有用な道具を準備する必要があるものと考えられる.今後も引き続き本課題については進めていく予定である.一方,昨年度に続き,確率分布の分位数に関する基礎的性質についても調査した.その成果の1つとして,確率分布に対称性を仮定した場合に,その平均,分散,及び任意個数の分位数の間に成り立つ関係を導出することができた.この結果を用いることにより,対称な確率分布に対する分位数の存在範囲,及び裾確率の存在範囲を求めることが出来た.前者は Renyi (1979) の拡張となっており,現在,これらの成果は論文としてまとめ,学術雑誌に投稿準備中である.
|