研究課題/領域番号 |
19K11867
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
今野 良彦 日本女子大学, 理学部, 教授 (00205577)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | スタイン推定 |
研究実績の概要 |
本研究課題の核心をなす学術的な「問い」は、古典的な統計的多変量解析の枠組みでは、本質的な困難を伴う問題設定において、分野横断的な数理理論を援用して、新たな統一的な枠組みを構築することはできないかということである。 本年度は、行列型多変量複素正規分布の平均行列における推定問題について研究をすすめた。特異な複素ウィシャート行列に関する部分積分の公式を Konno (2009, JMVA) は導出した。これにより、経験分散共分散行列の一般化逆行列の期待値を評価することが可能となった。この結果を踏まえて、まずはじめに、日本数学会2020年度年会ベクトル型多変量複素正規分布の平均ベクトルに対するスタイン型縮小推定量の導出について検討した。これは、Chetelat and Wells(2012, Ann. Statist.) で得られた結果の複素版への拡張になる。すなわち、経験分散共分散行列が特異な(存在しない)ときに、その一般逆行列を用いてスタイン型縮小刷定量を構築した結果である。さらに、Tsukuma and Kubokawa(2015) の議論を援用した positive-part 推定量がもとの推定量を改良することも示せた。この結果については、日本数学会2020年度年会において発表をする予定であったが、COVID-19 のために中止になった。提出したアブストラクトは、日本数学会ホームページに公開された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にある理論研究については順調にすすんでいる。 研究の目的中の (1) 経験分散共分散行列が特異な場合の多変量複素正規分布における平均ベクトルの縮小推定法の構築 については、2020年3月の数学会に成果発表を申し込んだ。論文については、20年度中に作成予定です。 (2) 等質錐上のウィシャート分布に関わる推測理論の構築 については、大きなアイデアの進展をみた。
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今後の研究の推進方策 |
Graczyk and Ishi (2014, J. Math. Soc. Japan) の理論は多変量正規分布の測度に基づくものである。統計手法の頑健性などを考察する上で、多変量正規分布の混合分布の確率測度をGraczyk and Ishi による 2 次写像の像として得られる統計モデルは重要である。このような観点から等質錐上の多変量統計モデルの構築を目指す。さらには、Ishi(2016, Entropy) を援用して、正則凸錐の広いクラスに対する多変量統計モデルの検定理論を構築していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の残高である。ほぼ計画通りに使用している。残金は端数である。20年度も計画通りに使用予定である。
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