研究実績の概要 |
情報通信技術の飛躍的な発展から, データ量が膨大になり従来の統計科学で扱われてきたデータに対するアプローチでは対応できない状況になってきている。このような状況に対して, 変量数の多いデータに対する統計手法の手法と理論の体系である多変量解析は新たな展開が必要とされている. 本研究は、高次元データやスパースデータの統計解析および一般化されたウィシャート分布族のものでの統計的推測理論の新たな地平を切り開くことを目的として研究を進めている. 具体的な研究課題は次の 6 つである. (a) 等質錐上のウィシャート分布に関わる推測理論の構築, (b) 等質錐上の新たな統計モデルの構築, (c) コンパクト多様体上の統計モデルの構築, (d) 低ランク平均行列の推定問題の新たな展開, (e) 経験分散共分散行列が特異な場合の多変量複素正規分布における平均ベクトルの縮小推定法の構築, (f) 切断型データのもとでの、コピュラで相関構造を記述したモデルの平均の推定法の構築. 本年度は, (d), (e), (f) を中心に研究を進めた. (d) については, 分散共分行列が未知の行列型多変量正規モデルにおいて, SURE 法(スタインの不偏リスク推定量法)を用いて, 母数平均行列が低ランクであるときの有効な推定量の構成を行った. 数値実験等で精度の評価を次年度の課題とする. (e) の問題についての体系的な結果となる成果を論文にまとめるつつある. この結果については, 2021 年度大阪市立大学・数学研究所で開催された研究集会で発表した. (f) に関する結果については, 3 つの論文で結果が公刊/公刊予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究申請で計画した 6 つの課題のうち, 3 つの課題について, 成果を発表する, もしくは成果をまとめる段階に来ている. 以上のことから研究の進捗状況はおおむね順調といえる. さらに, メタアナリシスへの応用研究を目指した研究成果も学術論文で発表したので, 当初の計画以上に研究が進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は, 「(d) 低ランク平均行列の推定問題」と「経験分散共分散行列が特異な場合の多変量複素正規分布における平均ベクトルの縮小推定法の構築」について, 前年度で得た結果を論文にまとめていく. そのために, 詰めなければいけないことについて検討していく. 「コンパクト多様体上の統計モデルの構築」を中心に研究を進めていく予定である.
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