研究実績の概要 |
本研究課題は, 古典的な統計的推測理論の枠組みにで多変量解析に現れる問題を分野横断的な数理理論を援用することで解決することを目指した. より具体的には, 多変量正規分布の多変数母数および生物統計学で有用なモデルにおける母数の縮小推定法の理論的な正当化を含めて新しい手法の提案を目指した. 成果として, 以下のものがあげられる. (1) 共分散行列が未知のときの複素数多変量正規モデルにおける平均ベクトルの同時推定問題において, Tsukuma and Kubokawa(2015, JMVA) を援用して, Stein 型縮小推定量の精度評価とpositive-part 推定量はもとの推定量を自動的に改良することを示した. (2) メタアナリシスにおける母数推定の問題を共通平均の推定問題の枠組みで検討し, 縮小型推定量の提案をし, 理論的な精密な評価が困難であったために精度の数値的な評価を行った. さらに, 1 次元正規分布の平均の推定問題において, 事前検定型推定量の評価を理論的に行い, 数値実験によって理論的な評価の正当性を検討した. (3) 共通な未知の分散共分散行列をもつ行列型多変量正規分布モデルの平均行列が低ランクである場合における推定問題において, 推定量のリスクの Stein の不偏リスク推定値(Stein's Unbiased Risk Estmate) を導出ことにより, データから構成されるランダム行列(非心度母数に対応する統計量)の固有値を縮小する低ランク推定量のアルゴリズムを提案した.
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