研究実績の概要 |
渡り鳥であれば移動方向と移動速度、風であれば風向と風力、というように、自然現象で遭遇するいくつかのデータは「角度」と「長さ」の組で与えられる。このような組は円筒(=シリンダー)上の点と同一視することができることから、シリンダーデータと呼ばれている。このようなシリンダーデータは、様々な学問分野において存在している。 シリンダー上のデータの例として、上で述べたもの以外にも樹木の樹冠の向きとその長さ、生物の移動方向と移動距離等が存在する。他にも、ある時刻の地震の震源地と次の時刻の震源地、さらにその次の時刻の震源地を結んでいくことにより、震源地間を角度で測ることができ、これにマグニチュードを加えることで、時間の情報を持つシリンダーデータと見なすことができる。このように様々なシリンダーデータが存在するが、シリンダーモデルは円周上のモデルに比較すると研究はあまりされていない。 そのような背景の下、本研究では(角度, 長さ)の観測を含むシリンダーデータやそれに関連した統計解析手法の開発を行っている。 1年目にあたる2019年度は、Abe-Leyモデルとも呼ばれているWeiSSVMモデル(Abe & Ley, 2017)の拡張に関する研究を行った(Imoto, Shimizu & Abe, 2019)。 また、シリンダーモデルを構築していくうえで、通常の統計モデルの研究の発展も非常に密接に関係してくる。このために、Fujisawa & Abe (2015)の多変量歪対称モデルを提案し、その性質を調べた(Abe & Fujisawa, 2019)。 シリンダーモデルの開発には、角度のみのモデルの研究ももちろん重要な役割を果たす。このために、歪対称な角度モデルの混合モデルに関する推測理論についても研究を進めた(Miyta, Shiohama & Abe, 2019)。
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