研究課題/領域番号 |
19K11872
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研究機関 | 統計数理研究所 |
研究代表者 |
逸見 昌之 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 准教授 (80465921)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 捩れを許す統計多様体 / 一般化エントロピー / 無限次元統計モデル / 非正則統計モデル / 情報数理科学 |
研究実績の概要 |
確率密度関数の集合を多様体と見なし、その上で統計的推論の構造を微分幾何学の方法により論じることから始まった情報幾何学は、これまで情報理論・最適化・機械学習などの関連諸分野にも影響を及ぼしながら発展してきたが、起源である統計学においては高次漸近理論やその他一部の限られた成果はあるものの、あまり大きな進展は得られていない。しかしながら、まだいくつもの未解決問題が残っており、統計的推論や統計的手法の構造を幾何学の観点から理解し発展させる可能性は十分にあると考えられる。そこで本研究は、申請者がこれまで行ってきた研究を踏まえながら、未解決である諸問題の解決を目指し、また解決すべ き新たな問題の発掘なども行うことで、情報幾何学の統計科学における役割をさらに促進させることを目的としている。 今年度は、昨年度に引き続き、推定関数から(パラメトリックな)統計モデルに誘導される「捩れを許す統計多様体」についての研究を行うとともに、「一般化エントロピー」に関連する情報幾何についての研究を行った。通常のエントロピーの一般化には様々なものがあるが、今年度は特に、スコアリングルールと呼ばれる確率分布推定のための損失関数に付随する一般化エントロピーを対象とし、ベイズ統計の観点からの考察を行った。また、国内でオンラインで開催された統計多様体に関するワークショップに参加し、特異点を持つ非正則な統計モデルの情報幾何に関する最近の研究動向の情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、新型コロナ感染症の世界的な流行により、予定していた海外出張が全てキャンセルとなり、海外の共同研究者との議論や研究集会へ参加ができなくなってしまった。このことは、研究が遅れてしまった大きな要因である。今年度は国内でやれることを順次、行っていったが、「捩れのある統計多様体」や「一般化エントロピー」に関する研究については、少しづつ進展があったものの、より挑戦的な課題である、無限次元や非正則な統計モデルの情報幾何に関する研究については、まだあまり進んでいない。これは、問題の難しさにも起因しているが、今後も可能なところから問題解決を目指していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では主に5つの課題を設定しているが、「捩れを許す統計多様体」と「一般化エントロピー」に関する問題については、引き続き、優先的に研究を行っていく予定である。また、他の3つの課題については調査的な研究を続けながら、取り組める問題から順次取り組んでいく。特に「無限次元統計モデル」や「非正則統計モデル」の情報幾何に関する問題は、長期的な展望を持って取り組む問題と、ある程度の期間で結果を見込める問題とに分類しながら、柔軟な姿勢で研究を行っていこうと考えている。来年度も、新型コロナ感染症の影響が続くと思われるが、何とか工夫をして、共同研究者と議論を行う機会をできる限り作りながら研究を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由は、新型コロナ感染症の世界的な流行により、国内出張、海外出張ともに全く不可能になってしまったことである。次年度も、新型コロナ感染症の影響はしばらく続くと思われるが、出張が可能となり次第、研究費は主に、共同研究者との議論を行うため、あるいは研究集会への参加のための出張旅費として使用する予定である。また、研究に必要な文献(書籍や論文など)の購入や、論文・研究メモの執筆あるいは研究発表資料作成のための、古くなったPC等の買い替えなどにも使用する予定である。
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