研究課題/領域番号 |
19K11875
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
廣瀬 哲也 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70396315)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | サイバーフィジカルシステム / 超低消費電力集積回路 / パワーマネジメント / 極低電圧回路技術 |
研究実績の概要 |
本研究では,次世代サイバーフィジカルシステム(CPS: Cyber Physical Systems)のキーコンポーネントとなる超低消費電力パワーマネジメント技術基盤の創出に向けた基礎検討を行った.ナノワットオーダーの超低消費電力集積回路(LSI)技術と超小型発電・蓄電デバイスとの協調設計により,バッテリレス・メンテナンスフリー動作を提供するパワーマネジメント(PMS)技術の構築を推進した. パワーマネジメントシステムの高効率化・極低電圧化技術に関して,オンチップ搭載可能なスイッチトキャパシタ回路技術を利用した昇圧コンバータの構成法の検討を行った.特に,スイッチトキャパシタの接続構成に応じて損失が変化し,電力変換効率が大きく変化することを確認した.またスイッチトキャパシタ型昇圧回路の数式モデルの構築に成功し,低損失・高効率設計に向けた指針を得た.また,極低電圧回路技術として,42mVの低電圧で発振するリング発振器を実現した. 最大電力点追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking)技術の開拓研究についての検討を行った.従来のアナログ方式のMPPT制御技術とは異なり,デジタル制御技術によるMPPT制御手法の検討を行った.これにより,リーク電流による精度劣化の課題を改善できる見通しを得た. 充電モニタとRTC(Real Time Clock)による電力利用タイミング制御技術の開拓研究を行った.充電モニタ回路では,逐次比較型ADCを利用し,超低消費電力で充電電圧をデジタル化可能であることを確認した.また時間制御向けのRTCでは,フルオンチップ構成,および水晶発振回路を利用した回路構成を検討し,100nWを切る超低消費電力動作を実現可能である見通しを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,パワーマネジメントシステムの構築,MPPT回路技術の開拓,そして充電モニタとRTCによるタイミング制御技術の開拓を目指して研究を行っている.パワーマネジメントシステムでは,スイッチトキャパシタ技術を利用した昇圧回路が必須となるが,接続構成に応じて損失が変化する.このスイッチトキャパシタ型昇圧回路の解析モデルの構築に成功し,パワーマネジメントシステムの高効率化の見通しを得ている.また,極低電圧化技術として,42mVの極低電圧で発振する回路を実現し,極低電圧回路技術の構築を推進している.MPPT制御方式について,デジタル制御方式を採用することで,リークによる精度劣化を回避することができる見通しを得ている.充電モニタ,RTCについて,一次検討によるシミュレーション評価でその有効性を確認している.以上より,概ね順調に進展していると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
パワーマネジメントシステムにおいては,提案手法を用いたオンチップ昇圧回路の構築を推進する予定である.シミュレーションベースでの有効性を確認したため,実際のLSIチップを構築し,その有効性を確認する予定である.極低電圧で動作する発振器を実現した.これを用いてオンチップ電源用の回路技術について検討を行う.極低電圧化を進めることで,消費電力の低減,ならびにエネルギーハーベスティング向けの回路技術の拡大・拡充を図る. MPPT制御回路については,基本特性を確認している.今後は,パワーマネジメントシステムにMPPT制御回路の統合を推進する予定である.特に,入力側MPPTと出力側MPPTのそれぞれのMPPT回路の構成についても検討が必要であり,適切な回路実装の検討を推進する. 充電モニタ回路,RTCについては,その効果をシミュレーションベースで確認している.LSIチップでの実現に向けた検討を推進する予定である.
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