研究課題/領域番号 |
19K11882
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
市原 英行 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (50326427)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Stochastic Computing / Approximate Computing / 計算機システム / Dependable Computing / LSI CAD |
研究実績の概要 |
本研究は,ストカスティックコンピューティングを実現する論理回路(SC回路)のための高位合成手法を提案し,SC回路の計算機支援設計環境を構築することを目的としている.本研究は4つのサブテーマ(P1~P4)からなる. 本年度の前半は,昨年度派生したテーマで,最適SC回路アーキテクチャ探索手法の提案(P1)の一部である,ニューラルネットワークのための新しいSC回路アーキテクチャ探索を継続した.提案したアーキテクチャを具体的にハードウェア設計し,シミュレーションすることで,提案アーキテクチャの面積,消費電力,演算精度,認識精度などを明らかにし,従来のSCニューラルネットワークと比較することで,その有効性を示した.また,提案したアーキテクチャに適した学習アルゴリズムも提案した.この成果は,DAシンポジウムでその一部を報告した(この報告は情報処理学会SLDM研究会セッション特別賞を受賞した).さらに,その成果をまとめた論文を電子情報通信学会和文論文誌Dに投稿し,採録が決定している(2021年7月号掲載予定).この結果から,サブテーマP1は一定の成果を得たと考えている. 本年度の後半は,最適パラメータ探索アルゴリズムの提案(P2)のために,線形FSMを用いたSC回路において,パラーメータの1つである並列度が,演算精度,面積,消費電力に与える影響について調査を始めた. また,高速回路シミュレーション手法の提案(P3)として,FPGAを用いたシミュレーション手法の開発に着手した.FPGAカードの設置,テスト,サンプル回路の動作などを経て,P1で利用したニューラルネットワークをシミュレーションできるところまで開発は進んだ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最適パラメータ探索アルゴリズムの提案(P2),および,FPGAを用いた高速回路シミュレーション手法の提案(P3)は,計画では一定の成果を得ている予定であったが,まだ成果と呼べる段階には至っていないためこのように判断した.計画よりも遅れている理由は,昨年度に派生したニューラルネットワークのための新しいSC回路アーキテクチャ探索にエフォートを割いたこと,研究に従事する学生数が予定よりも少なかったこと,そして,コロナ禍により発生した業務への対応で十分なエフォートが割けなかったことが挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の計画の遅延を受けて,全体として研究機関を1年間延長することを考えている.そして,次年度は,今年度着手した最適パラメータ探索アルゴリズムの提案(P2),そして,FPGAを用いた高速回路シミュレーション手法の提案(P3)をさらに進め,成果を得ることを目標とする.また可能であれば,これらの成果を含む既存の設計環境・資産とのインターフェスの提案(P4)に着手する.
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の2つの理由による. 1)コロナ禍で国内・国際会議にかかる旅費が必要とならなかったため. 2)コロナ禍で学生による実験補助に必要な謝金の支出がなくなったため. 使用計画としては,次年度,そして次次年度(延長を予定している)の,旅費及び学生謝金(実験補助)のために用いる予定である.
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