研究課題/領域番号 |
19K11889
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
越智 裕之 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40264957)
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研究分担者 |
今川 隆司 立命館大学, 情報理工学部, 助教 (90771395)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プログラマブルROM / メタルフリンジキャパシタ / フローティングゲート / マイクロエナジーハーベスティング / Self-poweredなセンサノードチップ |
研究実績の概要 |
本研究では、通常のCMOSプロセスで製造可能であり、かつ、書き込み時の消費電流が極めて小さい不揮発性メモリ素子を用いたプログラマブルROMを実現し、これを用いたSelf-poweredなセンサノードや、低廉な不揮発性プログラマブルロジックなどの有用性を示すことを目的としており、令和元年度は下記2項目に取り組んだ。 (1) FiCCを用いたCMOS互換な不揮発性メモリ実現に向けた素子特性測定を行った。研究代表者らはこれまで、標準CMOSプロセス上でMOSトランジスタのゲートにメタルフリンジキャパシタの一種であるFiCC (Fishbone-in-Cage Capacitor)を接続して疑似的にフローティングゲートを実現してフラッシュメモリと同じ原理の不揮発性メモリを実現することを提案し、0.18μmプロセスの試作チップにおいて5Vの書き込み電圧を60秒間印加すれば、少なくとも24時間は閾値電圧シフトが持続するという予備実験結果を得ていた。今年度はこの素子特性を詳細に実施したところ、初期閾値電圧が0.42Vである素子に5Vの書き込み電圧を5秒間印加すれば、閾値電圧は4V程度まで上昇し、それから約13日経過した後にも閾値電圧は0.5V以上を維持するとみられることや、25,000回の書き込み消去サイクルに耐えられるとみられることが確認できた。この他、書き込み電圧を3Vとした実験や、高温(80℃)環境での実験も行ったが、同様の保持特性が得られることが確認できた。 (2) 上記素子を用いたメモリセルの検討を行った。本研究では0.5V程度の低電圧での動作を前提としているため、メモリセルを相補的に組み合わせ、差動増幅回路により読み出しを行うべきであることや、データ保持期間中に意図せぬ書き込みが行われないよう、コントロールゲート端子を接地するトランジスタが必要であることなどが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FiCCを用いたCMOS互換な不揮発性メモリ素子の特性を明らかにし、予備実験では5Vの書き込み電圧を60秒印加していたところ、書込み時間は5秒でも十分であり、書込み電圧は3Vでも十分であることなどが明らかになり、この成果は11月の国内研究会で発表している。更に実測を行った結果、13日後でも読み出しが可能であることや、25,000回の書き込み消去サイクルに耐えられることなど、明るい材料が得られている。メモリセルの回路構成についても具体的な検討を行っており、次年度に詳細設計に着手することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、提案する不揮発性メモリセルを用いたメモリセルアレイおよび不揮発性プログラマブルロジックについて、それぞれ詳細設計を実施するとともに、要素技術の検証のためのチップ試作および測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
集積回路チップ製造委託(1回につき362,230円)と恒温槽(89,650円)の両方を今年度の科研費直接経費で執行することができなかったため、前者を大学の恒常的研究費から執行した。次年度使用額と翌年度分直接経費を合わせて、翌年度の集積回路チップ製造委託に充てる計画である。
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