本研究は帰納的ゲーム理論を数理論理学の成果によって補強するという意味で,ゲーム理論の分野において独自性を有するだけでなく,情報科学への応用の観点からも,特に自律分散システムの設計開発に対して有用であると言える。一般に,分散システムの設計は非常に複雑で難しく,各主体の持つ知識やメッセージの交換の方法の微妙な違いによって,目的とする均衡状態の実現の可否が変わってしまう。そのため,数理論理学などの厳密な方法を用いた定式化により,意図通りのシステムの設計が可能となることが期待される。またこのことは,ゲーム理論をもとに既に設計された分散システムの検証法としても新たな可能性を提供するものでもある。
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