研究実績の概要 |
本研究の目的は,webサイトの設計を,User Experience(UX)に基づいて妥当性確認をするために,概念構造に基づいたwebサイトへの訪問者の理論的な旅程を生成することである. 本研究では,クラス図を用いて,ソフトウェアシステムの対象領域を校正する概念,および概念間の関係をモデル化する.このモデルを概念モデルと呼ぶ.概念モデルをUMLのクラス図で表現し,クラス間の関連に定義されるロール属性を活用した.これによって,概念モデルの意味情報に基づき,ドメインの概念を構成するクラスおよびクラス間の関連,継承を辿りながら,webシステム上で利用者が渡り歩く旅程(本研究では,これをtraverseと言う)を自動的に導出する仕組みを手法として定義し,ツールに実装した.traverseを自動的に導出することは,webサイトの設計でUser Experience(UX)を考慮するため旅程のシミュレーション情報となる. 本研究の全体を通して,traverseの自動生成における3つの課題を解決した.(1)旅程の表現方法:自然言語を用いたシナリオ形で,オブジェクトを辿る過程を表現した.(2)訪問者のアクセス権限をtraverser生成の制約とする方法:訪問者を役割に分類し,役割毎のCreate, Update, Read, Deleteの4つの権限をクラス図の関連の属性として定義した.(3)オブジェクト単位での旅程の作成方法:これは最終年度の課題であった.ここではownという概念を導入し,オブジェクト群のアクセス範囲を明示することで解決した.本研究は,要求プロセスと開発プロセスの協調を意図したものであり,そのプロセスを鳴門モデルとして研究発表を行った.以上により,traverを自動生成するための手法とツールが完成し,本研究の目的を達成した.現在,学会論文誌へのツール論文の投稿を準備中である.
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