研究課題/領域番号 |
19K11907
|
研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
位野木 万里 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 教授 (10739634)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 要求仕様書の要約 / 要求工学 / 自然言語処理技術 / 定量要約 / 記述状況の要約 / 非機能要求の分類 / 重要文抽出 / 抽出型要約 |
研究実績の概要 |
本研究では、大規模情報システムの要求仕様書の効率的な理解のために、記述内容を(1)システム構築の背景や目的、(2)機能要求、(3)非機能要求に分類し、各分類に対して自然言語処理技術に基づく要約技術を用いることを提案し、使い分けの手法を定義した。 本研究では、(1)システム構築の背景や目的については、単語の出現頻度に基づく重要文抽出の技術、(2)機能要求に対しては、アクター、データ、画面、振る舞い等の設計要素別に定義内容を一覧化するキーワード抽出の技術、(3)非機能要求においては、非機能要求記述を種類別に自動分類して定義状況を定量化する技術を対応づける参照モデルを定義した。2021年度では、前述(3)の非機能要求記述を種類別に自動分類し定義状況を定量的視点で可視化する要約手法を考案した。本手法は、要求仕様書に含まれる非機能要求を入力として、Convolutional Neural Networkとドメインオントロジーに基づく2つの自動文書分類技術を組合わせ、非機能要求の自動分類結果を定量的観点で視覚化することで要約データを生成する。本研究では、公開されている要求データをとりあげて、分類精度と定量要約手法の可視化方法を評価した。非機能要求の分類については、Convolutional Neural Network、ドメインオントロジーのそれぞれ単体での結果と、Convolutional Neural Networkとドメインオントロジーを組合わせた合議アルゴリズムを適用した結果を比較し、合議アルゴリズムによる方法の方が、分類精度を向上させることを確認した。また、有識者インタビューにより、非機能要求の定義状況を定量要約により可視化することは、定義が不十分な非機能要求の種類を特定しやすく、要求仕様書中のリスクの発見と防止に有効活用可能であることを確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの視点による要求仕様書の要約手法、記述状況の要約手法に加えて、要求仕様書に複数記述される表の要約手法を考案した。実案件の要求仕様書と公開されている要求データを用いて要約情報を生成し、精度と有用性に関する評価を実施した。
|
今後の研究の推進方策 |
考案した要求仕様書の要約手法について、評価対象の要求仕様書のデータを拡充して適用評価を行う。2021年度は、公開されている要求データを用いた適用評価を行ったが、学習データとしては件数が少なく、分類精度向上にさらなる強化が必要であると考えられるため、実案件による要求データを追加して、適用評価の拡張と、手法へのフィードバックを行う。また、要約情報の生成パターンの種類、種類別の要約情報の利活用のノウハウを明らかにし、ノウハウの公開、共有方法についても具体化する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2021年度も、新型コロナ感染防止のために学会参加を絞り込み、旅費は発生していない。また、自動要約プログラム試作、結果の公開については、学生アルバイトと研究責任者本人の内作にて対応したため、開発試作費が予定よりも発生しなかった。2022年度では、重要文抽出、キーワード抽出、分類と定量化要約の観点での要約の組合わせと、記述状況の生成による要約機能の開発の総まとめとして、開発環境構築と試作評価のために設備購入とクラウドサービス等の活用、プログラム試作費等に研究費を使用する。加えて、論文投稿ならびに学会参加により研究成果を公開する予定であり、投稿料、学会参加費等で研究費を使用する。
|