研究課題/領域番号 |
19K11909
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
滝本 宗宏 東京理科大学, 理工学部情報科学科, 教授 (00318205)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 帰納論理プログラミング / GPU / 粒子群最適化 / PSO / 群知能 / コンパイラ / コード最適化 / カーネルフュージョン |
研究実績の概要 |
帰納論理プログラミング(以下,ILP と呼ぶ)は,深層学習と比べ,小規模の訓練データで済み,予期しない振舞いに対して,導出過程を知る ことができる機械学習の1 手法である.しかしながら,ILPの,訓練データから仮説と呼ばれる論理型言語のプログラムを生成する学習過程は,コストが高いことが知られてお り,ILPの大規模問題への適用を難しくしていた.本研究では,ILPを,3Dグラフィックスなどの画像描写を並列処理する計算ユニットGPU(Graphics Processing Unit)を用いて高速化する手法を実現し,ILP の大規模問題への適用を実現することを目的にしている. 2021年度は,2020年度に実現したILPシステムを,GPU上での高速実行と群知能による仮説探索の点で拡張した.GPU上での高速実行では,仮説の正しさを検査する被覆検査を,SQLに変換することによってGPU上で動作するPostgresql上で並列実行を可能にした.本拡張によって,ILPのコストの大半を占める被覆検査を大幅に高速化できることを示した.また,群知能による拡張では,これまでA*-likeで行われていた仮説探索を,群知能の1つである粒子群最適化(以下,PSOと呼ぶ)で実現することによって探索範囲を縮小し,高速化できることを確認した.さらに,SQLコードで連続するGPU上での計算を融合することによって,GPU上でのILP実行をさらに高速化することができるコンパイラのコード最適化を実現し,その効果を実験で示した.本コード最適化については,学術論文に発表済である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画では,昨年度中に次の3点を実施する予定であった. 1) メタヒューリスティクスによってILP を拡張するとともに,Host-GPU 間の通信コストを低減できるように改良を加える.2) 大規模問題に適用して性能を評価する.3) 成果の発表を行う. 実際,1)については,メタヒューリスティクスの1つである,群知能のPSOを用いて,2倍の高速化を実現した. また,中間表現としてSQLを導入し,PostgresqlをとおしてGPUを利用することによって,Postgresqlが作成するHost-GPU間の通信コストを基にした実行計画を利用できるようにした.この実行計画によって,GPUで実行すべき部分とHostで実行すべき部分のバランスをとることができる.また,GPUの実行単位であるカーネルを複数融合する手法を実現した.本手法によって,融合されるカネールの間にあったホストとの通信を削減し,1.5倍の高速化を実現した.このように,実現すべきものを実現し,評価についても良好な結果を得ている.2)と3)の実践的な評価と公表については,本年度,より実践的な評価を行う予定であることと,SQLによるILP高速化とメタヒューリスティクスによる探索範囲削減について発表予定であることから,新コロナ禍の影響の影響も考慮して,おおむね順調に進展しているとした.
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今後の研究の推進方策 |
現在,国立がんセンターとの共同研究で,がんの実際の症例と患者の特徴から,知見を抽出するために,本システム適用している.その評価結果も早々に得られると考えている.また,SQLによるILP高速化と,メタヒューリスティクスを用い探索範囲の削減については,国際会議に発表すべく,準備を進めている.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は,新コロナ禍の中,教育担当の副学長として大学全体の教育を守るべく割かなければならない時間が多く,また論文発表のために出張も許されない中,助成金を計画通りに使用できなかった. 本年度は,既に,論文がトップカンファレンスに受理されており,サンディエゴに渡航し,口頭発表を行う予定である.また,存在するGPUマシンが古くなってしまったことから,正確な評価を行うために,新しいGPUマシンを購入する予定である.
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