本研究では、複数のネットワーク同士が相互に依存した多層構造を有するネットワークのロバスト性を向上させる手法の開発を目指している。 本研究では主に、(1) ネットワークに少数のリンクを追加することで、攻撃に対して頑健な多層ネットワークを構築する技術、(2) ネットワーク上での有害情報やウィルスの拡散を抑制し、多層ネットワークの機能を正常に保つための技術、(3) (1) および (2) に共通して用いられるネットワーク内の重要ノードを特定する技術、の研究に取り組んだ。 特に2021年度においては、(2) の有害情報拡散抑制の研究に取り組んだ。シミュレーション実験により、ネットワークのコミュニティをまたがるノードから訂正情報を発信することで有害情報の拡散を効率的に抑えられることを明らかにした。また、ソーシャルメディア上の情報拡散の実データの分析により、少数のリンクを切断する既存の情報拡散抑制手法が、現実のソーシャルメディア上の情報拡散を抑制する効果は限定的であることを指摘し、改良手法について議論した。 研究期間全体を通じて開発したネットワーク上での情報拡散を抑制する手法は、社会ネットワーク上でのフェイクニュースや誹謗中傷の拡散のような望ましくない情報の拡散を抑制し、社会における情報流通を適正化する技術へ応用することが期待される。また、攻撃やウィルス拡散に対して頑健なネットワークを構築する技術は、IoT (Internet of Things) ネットワークなど、頑健な社会基盤のネットワーク構築に応用することが期待される。今後、このような社会実装を見据えて、研究を展開していく予定である。
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