研究課題/領域番号 |
19K11918
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
長谷川 孝明 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (00189531)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ITS 情報通信 / コネクテッドカー / マイクロスコピック交通流シミュレータ / T秒Rm評価法 / 安全運転支援システム / 安全性評価 / センサ / 自動運転 |
研究実績の概要 |
接触事故防止を目的とした低遅延な車車間路車間通信システム(以降、ITS情報通信システムと呼ぶ)があるが、「ITS情報通信システムを用いて接触事故を防ぐための警告型安全運転支援システムの効果」がどの程度あるかが「根源的な問い」である。この根源的な問いは、以下の三つの「解決すべき問い」からなる。まず、そもそも従来のITS情報通信システムの通信性能評価方法が妥当であるかが「第一の解決すべき問い」となる。次に、妥当な通信性能の評価方法で得られた通信システムの最適パラメータで、交差点を含む一般道の交通において、「総合遅延」の関数として、どの程度の道路交通の「安全性」が得られるかが「第二の解決すべき問い」となる。さらに、「種々の交通信号制御方式や種々のラウンドアバウト」と道路交通の「安全性」がどのような関係にあるかが「第三の解決すべき問い」となる。これらをまとめることで、「根源的な問い」の答えを得ることが本研究の最終目的となる。 従来のほとんどの研究は、道路の一定の評価領域内に存在する全車両の情報共有(通信)の性能評価で行われていた。これに対し本研究では、通信を含むマイクロスコピックな交通流シミュレータを構築することにより、「任意の時刻において、一定時間T秒以内(例えば2秒以内)に二台の車両間の中心点間距離が一定の範囲R[m]以内(例えば5m以内)に入る可能性のある車両間の通信のみを時々刻々評価対象とした通信性能評価法(「T秒Rm評価法」と呼ぶ)」で、本年度は評価法の検証と確立を行った。さらに、「ドライバの種々のミスと機械の遅延を一元的に『総合遅延』として扱う」ことで、安全性の評価を可能にする一般道のITS情報通信を含む交通流シミュレータを構築した。また、通信他に自動運転も評価可能となるようセンサも加えた。2020年度はこの妥当性を高めながら、種々の平面交差方式の安全性の検証へ進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
運転手の認知・判断・操作の遅れ,機械的な遅れなどの総合的な遅延時間を「総合遅延」(本申請人が90年代から高速自動車道で導入してきた手法)として、一般道でのシミュレータに今回初めて導入したが、高速道路よりも一般道ははるかに複雑なため、予想した行程よりも時間がかかった。しかしながら、通信だけでなく、センサも導入したために、自動運転の評価へも十分応用できる見込みが立ち、この点では、得られる知見の範囲を広げる意味で、むしろ進んだ。 シミュレータの開発は常に、結果の検証、フィードバックと改良を伴うため、開発が終わったということを明確に区切ることは困難である。 以上の様な状況から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、「T秒Rm評価法」の検証を続けながらも、広く提唱することと、この評価法に基づきあるべきITS情報通信システムをセンサシステムを含めて明らかにすることが第一である。次に、自動運転を含めた安全運転支援システムの安全性の性能評価を、種々の平面交差方式(信号化交差点/ランドアバウト)において詳細に行い、交通信号の制御方式や種々のラウンドアバウトの方式に関して、その安全性を明らかにしてゆく。具体的には、道路構造や信号機の信号制御方式の違いが、人の運転と自動運転の車両の混在下での道路交通の安全性に与える影響を明らかにしてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会参加のための出張予定のために取っておいた予算が新型コロナウイルスの影響により変更になったため。
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