研究課題/領域番号 |
19K11927
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
作元 雄輔 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (30598785)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソーシャルネットワーク / ソーシャルメディア / ネットワーク探索 / スペクトラルグラフ理論 / ランダム行列理論 / ネットワーク科学 |
研究実績の概要 |
近年,ソーシャルメディアやスマートフォンの爆発的普及により,個人の情報発信や情報収集のコストは大幅に削減されている.その中で,地震や津波などの災害時などにおいてソーシャルメディアを通じて,特定の人物を迅速に発見することが行われている.本研究課題では,そのような背景を踏まえて,ソーシャルネットワーク上で特定の人物を迅速かつ効率的に探索することができる方法の構築を目指している. 令和 2 年度の取り組みでは,令和 1 年度にスペクトラルグラフ理論やランダム行列理論に基づくネットワーク解析を通じて明らかにしたランダムウォークに関する理論的知見に基づいて効率的かつ迅速な人物探索を行うことを可能とする方法の基本設計を行った.この方式では,ソーシャルネットワークが持つスケールフリー性(次数の分布がベキ分布に従う性質)を巧みに利用し,少ない探索時間で実行しつつもネットワークに与える負荷を小さくすることが可能となる効率的なランダムウォーク探索を活用している.シミュレーション実験を通じて設計した人物探索法がソーシャルネットワーク上で有効に動作することを確認した.また,人物探索法の基本設計およびシミュレーション実験に関する研究成果を,電子情報通信学会の国内研究会(コミュニケーションクオリティ研究会や通信行動工学研究会)で発表するとともに, 国際会議(IEEE COMPSAC 2021 および INCoS 2021)や電子情報通信学会の英文論文誌 B で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和 2 年度の取り組みによって,迅速かつ効率的に人物を探索する方法の基本設計が完了し,その基本的な特性を理解することができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和 3 年度では,まず,令和 2 年度に構築した迅速かつ効率的な人物探索法の様々な特性を調べるために,スペクトラルグラフ理論およびランダム行列理論を用いた基礎理論の拡充と,大規模なシミュレーション実験の実施を計画している.現実のソーシャルネットワークは複雑な構造(時変化性,モジュール性など)を持っており,その構造が提案手法に与える影響を理解するために,基礎理論の拡充と拡充された理論に基づく解析を行う.また,大規模でかつ複雑なシミュレーションモデルを用いた実験を通じて,探索法の実行時間やネットワークに与える負荷を評価する.シミュレーション評価の際に,高速ではあるが高負荷となるフラッディング探索と提案手法の性能の違いを明らかにする.
また,本研究で構築している迅速かつ効率的な人物探索法を実社会に還元するためのアプリケーションシステム開発方針の検討を行う.ここでは,どのような技術を組み合わせていけばどのようにしてシステムが構築できるかの見通しをつける.その見通しに基づいて,人物探索法のプロトタイプアプリケーションの開発を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19 の影響により,国際会議や国内研究会の多くがオンラインでの開催となり,予定していた旅費の使用が無くなった.その分の研究費は,令和 3 年度に行う提案方式の評価実験の拡充に必要となった費用に充填する予定である.
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