研究課題/領域番号 |
19K11930
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
森野 博章 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50338654)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 車両間通信による交通流制御 / 時系列予測 / 機械学習 / エッジコンピューティング |
研究実績の概要 |
上り坂区間を含む高速道路において,渋滞が生じやすい上り坂区間の中間地点と,上り坂区間より手前の2か所で測定する交通量の時系列データを用いて,多変量LSTMによる時系列予測を行って中間地点で渋滞が生じた数分後に手前でも渋滞が生じることを予測する.サグ部手前より後方で,渋滞が生じた後ではなく数分後に渋滞するという予測ができた時点で渋滞吸収運転を開始することで渋滞を軽減する手法について評価を行った. 予測手法については,1カ所の交通量だけを用いる場合と2カ所の交通量を用いる場合(それぞれ1変量予測,2変量予測)で予測精度を比較した. 道路モデルは上り坂区間を含む2車線道路を模擬し,道路の0m地点でスタートする各車両については実際に渋滞が発生した高速道路で取得したデータに基づいて走行速度と車間距離を設定する.追従モデルにはIDMを用いた. 評価の結果,1変量予測と比較して2変量予測で精度が向上することを確認した.ただし高い精度が得られるのは時系列の1ステップ先の数値を予測する場合のみで,2ステップ先以降の予測については1変量予測,2変量予測のいずれでも精度が急激に低下することが分かった. 次に時系列データのステップ間隔をt_{step}とした際に,ある時刻t_0でその1ステップ後 すなわち t_0 + t_{step} の時刻に上り坂区間の手前で渋滞が発生すると予測された場合に,その後方で渋滞吸収運転を開始する時刻を変化させて渋滞軽減効果を評価した.渋滞吸収運転を開始する時刻を t_j = w*t_0 + (1-w)(t_0 + t_{step}) と設定し,例としてt_{step}≒3分に設定しwを0から1まで変化させたところ,w=0.1,0.2の場合に対象区間の車両平均速度特性が最も良くなることを確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定ではカルマンフィルタおよび機械学習による時系列予測のモデルを構築し,車両速度制御を組み合わせたシステムをシミュレータ上で実装することとなっていた.現時点で機械学習の一方式としてLSTMによる時系列予測のモデルを構築し,2変量LSTMで高い予測精度が得られることを確認し,これと車両速度制御を組み合わせた場合の第一段階の性能評価までは終了している.カルマンフィルタとの比較は2020年度に行う. システムの性能目標として,従来手法と比較して,判定精度(適合率と再現率)を維持しつつ,対象とする渋滞を初めて検知する時刻を1分以上早め,これにより渋滞発生箇所の平均車両走行時間を従来と比べ20%以上短縮させることを設定していたが,現時点では検知時刻を約2分早め,渋滞発生箇所の平均車両走行時間を約10%短縮させることができている.
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り,構築した制御モデルについて,可能な限り実際に取得された様々な道路での交通流データを入力データとして用いて,2019年度に得られた性能(平均車両走行時間を約10%短縮)がこれらのデータに対しても安定して得られるかどうかを検証する.
今までは渋滞箇所の後方車両が渋滞吸収運転による車両速度制御を行うとしてきたが,今年度は合わせて後方車両が並行する別の道路へ迂回するシナリオも設定し,迂回先でもそ渋滞を生じさせずに高速道路での渋滞軽減を図ることができるかどうかを評価する.
最後に,時系列予測の手法としてカルマンフィルタを用いる場合の評価も併せて行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月の国際会議発表が直前でオンライン開催となり,執行を予定していた発表者と教員の旅費が未使用となったため.
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