提案する速度予測に基づく減速制御の開始時刻決定方式に関して,2つのテーマを実施した. 1つ目として,方式を適用するベースとなっている従来の減速制御を2022年度までのものより精度の高い方式に変更して性能評価を行った.速度予測を適用することにより,平均速度が30km/h以下の車両の比率が制御を適用しない場合と比較して約1/2に低減されることが明らかになった.これは渋滞緩和を目的では好ましい特性であるといえる. 2つ目のテーマとして,各車両から収集された速度情報の取得時刻とその情報が予測器に入力される時刻との差(時間差)が大きい場合に,予測器が出力する将来時刻の速度の精度が低下すること,さらに減速制御自身の制御性能も劣化することの2点が理由で速度向上効果が大きく減少する問題に取り組んだ.渋滞緩和の対象エリアでサーバに車両速度をアップロードする車両の台数が多い場合,上りリンク回線の帯域と同時接続数の制限からアップロードの周期を大きくせざるを得ず,この周期が例えば10秒のオーダまたはそれ以上になると上述の時間差の問題で制御性能が劣化することをシミュレーションにより明らかにした. これを解決するため,減速制御の目標速度をサーバ側で計算して各車両に指示する従来の方式に替えて,制御を行う各車両が周囲の車両の位置と速度情報をサーバから受信し,この値をもとに自身の目標速度を計算する方式を新たに提案した.この計算は強化学習に基づいて行う.時間差の影響のある過去のデータを入力し,渋滞が解消するように目標速度を出力するように学習をさせる.性能評価の結果,時間差が10秒以上の条件で従来よりも平均速度を向上させる効果があることを明らかにした.
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